壊れてからが

 スーパーで買い物する度に、シールを地道に集めていたという義母が、そのシールを貼った台帳を息子に渡したのを、しばらく忘れていて、たしか子どもが生まれたころに、100冊近くたまっていた台帳があることに気がついたのだ。それで、必然的に、台帳は子どものおもちゃと引き換えられることになった。お絵かきボードやブロックと引き換えることができて、ずいぶん助かっている。おばあちゃんはありがたい。
 残り少ない台帳の残りを、レゴと引き換えることにした。レゴは、夫も私も、子どもの頃、とても欲しかったあこがれのおもちゃだった。欲しかったのに買ってもらえなかった。というより、欲しいと言いだせないうちに、大人になってしまった。それでふたりとも、子どもが生まれた以上は、レゴを手に入れる、と心に決めていたのだった。それにしても、おばあちゃんはありがたい。
 それで引き換えの手続きをしにスーパーに行った。アイスクリームも食べたし、さあ帰ろうとしたときに、安売りのおもちゃが積まれているなかに、線路と汽車のセットが、500円ほどで売られているのを、夫が見つけた。プラレールの小型のように見えるが、電池ではなく、ねじで動く。「リクのきしゃ」と子どもが抱きしめるので、500円だし、買って帰ったら、もう夢中で、ごはんのときも、口にごはんをつめこんでは、汽車のところにもどっていく、というふうだったが、みると、さっそく壊している。線路の接続部分が折れてしまったので、しょうがない、セロテープで貼り付けた。
 壊れるおもちゃは、買ったその日か、あんまり日がたたないうちに壊れてしまう。そうして、その壊れたおもちゃがお気に入りだったりするのだ。1歳になってまもない頃に、店先で見つけて欲しがって、おじいちゃんに買ってもらったクレーン車も、その日のうちに壊れはじめ、数日であれこれの部品がはずれて、ぼろぼろだったが、子どもは何よりそれが好きで、ごく最近まで、どこへ行くにもそれを持っていった。
 おばあちゃんに言わせれば「壊れてからが、おもちゃ」なのだ。ねじ式汽車にもがんばってもらおう。