何日か前のこと。
ママ、こういう短歌知ってる?
と息子が声をかけてきた。
ああいやな声が出ると思いつつ子を叱る夕餉のときにいつも 前田康子
さうぢやない 心に叫び中年の体重をかけて子の頬打てり 小島ゆかり
耐へきれず湯のなかに口ひらく貝そのやうに子を責めてはならず 松尾祥子
どれも耳にした覚えがある。見てみると、息子が開いていたのは、受験研究社の「小学高学年自由自在 国語」。問題は解かないが、文章は読む。そこに、歌人の松村由利子さんの「物語のはじまり」という本から、子どもを叱るということに関する短歌をひいてのエッセイが載っているのだった。その本、うちにありますよん。
言葉の暴力や、相手の逃げ場をふさぐような、子どもを追いつめる叱り方はよくないというようなことも、書いてあるんですけど、ちょうどパパに叱られたあとの息子は、共感して読んで、ひそかに溜飲をさげたようだった。やっぱりパパの叱り方はひどいよ。
ところが翌日、息子が見た別の本には、何かの故事がひかれていて、それは、子どもが父に鞭打たれながら学問して、父もにくいし、鞭もにくいのだったが、長じて学問で身を立てることができるようになって、かえって感謝した、という話だった。
ちょうど勉強のことで叱られたのだったが、
ぼくは、パパをにくむべきなんだろうか、感謝すべきなんだろうか、と息子が言うのがおかしい。
そりゃ自由だよ。