踊る炊飯器

1日、ぼくたちの作者は誕生日だったので、ぼくらは炊飯器でケーキをつくった。でも新しい炊飯器じゃない。なぜって、カープは日本一を逃したから。
そんな話を、英語のノートのなかでハンプティたちはしていた。
息子は、電子辞書駆使して、作文しているが、文法よくわかってなかったりする。なので、ちょっと書かせてみた。三人称単数の動詞の変化。
「炊飯器は踊る。炊飯器は踊らない。炊飯器は踊っている。炊飯器は踊った。炊飯器は踊らなかった。………」

ハンプティたちのことなので、途中でいろいろ、はじまる。
「……炊飯器は上手に踊った。…うそお。」
「炊飯器は踊ることができる。炊飯器は踊ることができない。炊飯器は踊るだろう。炊飯器は踊らないだろう」
「……炊飯器は踊りたい。…ほんと?……炊飯器は言った「踊ってみせる」……ぼく、炊飯器と一緒に踊りたい。……えー、クレージーだよ。」
「……女の子と一緒に踊らないとつまらないよ。……じゃあ誰と踊るの?アリスと?クラスメイトと?……アリスと!……でも、彼女はすごくお婆さんだよ。……いいんだ、ぼく、彼女好きだし。」

1日の誕生日の日、いつも筆箱に入れているロッカーの鍵がなかった。鍵がないと、教科書もノートも取り出せない。それで国語の先生に言って、職員室にスペアキーを借りに行った。英語の先生が開けてくれた。その時間のあと、クラスでいつも一緒にいるFが、「誕生日おめでとう」と言って、ロッカーの鍵を出してきた。
朝、筆箱があけっぱなしだったので、そこから盗ったらしい。
息子が、すごく怒ったら、Fはしきりにあやまった。
担任が来て、鍵のことをきいたから、事情を話した。
その3日後の金曜日、Fは今度は、筆箱からメモ帳を盗った。お昼の時間にメモ帳がないことに気づいて、Fに聞くと、ポケットから出してきた。息子はまたすごく怒って、Fはまたしきりにあやまったそうだ。

怒ったの? と聞いたら、すごく怒った、と言う。そうか、怒ることができるようになったんだ、とうれしい。小学校の頃にはできなかったことだった。たぶん、すこし自信ができてきたかもしれない。
Fは、春に、何度か息子を殴ってきた子だ。抗議したら、それから殴らなくなり、仲良くなっていた。
この悪ふざけは、看過できないが。
先生に言っていいよ、って言ったら、少し様子を見るって言う。ぼくがいなかったら、Fはぼっちになるだろう、って言う。察するに、Fは何かジェラシーを感じると、手を出さずにいられなくなるのか。
小学校の頃、いろいろ揉まれたおかげで、息子はいたって冷静だ。Fくんはムーミンに似てるかな、と言ったら、たぶん、すこし似てる、って言う。

そのムーミンは、地元中学ではなく、校区外の中学に進んだが、夕方バス停でばったりあって、久しぶりに話したらしい。どんな話? ってきいたら、「クラスに巨乳が3人いるんだって」って言う。

……聞くんじゃなかった。