あれは、ああいうものだから。

息子に学校の様子を聞くと「洪水ちゃんが」とはじまることが多い。いつものことで聞き飽きたが、洪水ちゃん、最強である。彼女はポケットに三角定規や消しゴムを入れていて、授業中に、「ちょっと待ってください、消しゴムがない」と先生の話をさえぎったり、ぼくが係りの伝達を話している最中に、鼻をかんで聞こえなくしたり、先生が、わざとじゃましてるか?と突っ込むと、いいえ、と言うが、また話そうとすると、また鼻をかんだり。もちろん洪水ちゃんはあくまで洪水ちゃんのペースで鼻をかんでいるだけだけど。ほんとうは洪水ちゃんもぼくと同じ係りなんだけど、彼女はまったく何もやらないから、ぼくがひとりで全部している。でも何もさせないのもよくないだろうと思って、これくらいならできるかなと思って、試験前の提出物を持っていくことをお願いしたんだけど、忘れていて、英語の先生には、出せていないのはこのクラスだけだよ、点数さげるよ、といやみ言われるし。Fくんからは、あいつにものを頼むのがばかだ、と言われるし。(Fはあれから、息子のペンケースのなかのものを持って行かなくなり、仲良くやっているらしい。Fも息子もそこそこコミュ障だが、洪水ちゃんには敵わない。)

学校生活についてアンケートがあったときに、耐えかねて、洪水ちゃんのことを書いたら、先生に呼ばれて、「あれは、ああいうものだから。ぼくもがんばって指導するけど」と言われたらしい。
洪水ちゃんは、給食を運ぶ当番もいつも忘れる。ホワイトボードにわざわざ書いて視覚支援しているのに、忘れていて、いつも遅れて、一番重いものをよたよたともってくる。
遅くなることはわかっているんだから、軽いものを残しといてやれ、と先生は言ったが。
そんなこんな。

とにかくそういうわけで、「あれは、ああいうものだから」が我が家で流行るようになった。
パパと息子が、私についてそういうのである。あれは、ああいうものだから。

「気がついたんだけど」と息子が言った。ママ、いつも同じ格好だよね。ほかに何かちがう服はないの? みすぼらしくない?
そういえば、フィリピンで500円ぐらいで買ったGパンで、1年通してますね。何を着るか、とか、考えるのが苦痛なわけ。金がかかると思ったら、もっと苦痛なわけ。
息子の学校指定のコートに2万円かかってふるえましたけども。
私のセーターは古着屋の200円で、または、どっかからのもらいもので、それ以上高いものを着るのはいやですけど、そうか、みすぼらしさが気になるか。そういえば、昔むかし、私は同じことを私の母に対して思った気がする、でもその母と同じことをしているわけだ。

そこらへんこそは、「あれは、ああいうものだから」と見逃してほしいとこですけどね。無理なことって、あるんだよ。

定期考査終わっておめでとう。ちょうどその日に、届いた。クラウドファンディングで、三江線の存続を訴えたプロジェクトに寄付していたんだけど、その返礼の本など。遅ればせながら、息子の誕生日のプレゼント。あれから廃止が決まって残念なことですが、運動はまた何かに繋がっていくかもしれないね。Cimg6040