再提出の罠

訂正して再提出からもどってきたノートは、また新たに再提出と書かれていて、息子はまた訂正して再提出したらしい。なので、ノートはまだ戻ってこない。
ノートが戻ってこないと、家で学習できないから、スタンプはいつになってももらえない。再提出の罠だなあ。
手紙を先生に渡したかを確認すると、「good」と息子は言った。「この話はもう終わった」。どうやら、自分的にはもう平気になったってことらしい。

『拝啓、アスペルガー先生』(奥田健次)という本があって、臨床心理士アスペルガーの子への支援記録を綴ったものだが、読みやすくて楽しい本なので、息子も小学校の頃に読んでいた。(この本おすすめ。小学校高学年から読めます)

その本を数日前に、本棚の奥からひっぱりだしていたのだが、「ママ、ここ読んで」と見せてくれたのは、5歳のナナ君のエピソード。
おしゃべりもできるし、大人と会話することもできるのに、子ども同士で遊べない男の子の話。大人は、ナナくんにあわせて話してくれるが、子どもは自分勝手なので、ついていけなくなる。それで、奥田先生は、ゲームを通して、ナナくんに自己主張の仕方を教えたり、ルールの変更に臨機応変に応じる訓練をしていく。数か月後の幼稚園でのエピソード(お母さんの報告)。

「隣のクラスの子たちが何人かでラーメン屋さんごっこをしていました。
ナナはラーメンがもらいたくて「ラーメンください」と言いにいくと、
ラーメン屋の子どもたちは「お金をもってないとダメ」と言ったそうです。
するとナナは、自分の教室に帰って紙で丸をいっぱい書いてそれを持ってまたラーメン屋さんに行くと、
「切ってないからダメ」と言われたそうです。
ナナはまた紙を持っていって、ハサミで丸を切って持っていったら、今度は、
「100円だから100って書いていないとダメ」と言われたそうです。
そこで見ていた先生はちょっと気の毒に思って少しだけ手伝ってくれて、ナナはラーメンをゲットできたみたいです。
この話は、子ども同士のやりとりがダメだったナナにとっては快挙なのでとても嬉しかったです」

英語の先生との再提出のやりとりで、息子はこのエピソードを思い出したらしい。なるほど。そして、ナナくんの姿に励まされた。
つまり、英語の先生はラーメン屋の子どもたちなのね?
「そうだよ」
ナナくんの話は子ども同士のコミュニケーションの問題がテーマなんだけど、英語の先生は、子どもなの?
「そうだよ。だって、ぼくとたった10数歳しか離れていない。ミスOは、子どもだよ」

ノートのなかのハンプティたちが、再提出の罠から逃れて帰ってきたら、今度はハンプティたちとボブ・ディランの話をしたいらしい。