世の中にはおせち料理というものがあって

中学受験は、家庭の経済力とか文化力とか情報収集力とか、いろいろ影響するよね、と思う。うちは塾行かせてないから、私が家庭教師なわけで、とんでもないよなあ、と思いながら、何とか勉強つづけている。

今日は算数ができなくてへこんでしまったので、じゃあ、好きな社会科の問題でも解いてなよって言ったら、気をとりなおしてやってたけど、無形文化財の問題で、和食の行事食について、その内容や意味について書けという問題があった。
「行事食? 何を書けばいいの?」
つまり、たとえば、お正月のおせち料理のかずのこや煮豆のことかな。かずのこは子孫繁栄とか豊作とか、豆はまめまめしく働けて健康であるとか。
それで「世の中には、おせち料理というものがあって……」って説明していたら、パパが爆笑だった。
だって、息子は、おせち料理なんて知らない。だって私つくんないし。かずのこなんて食べたことないと思うよ。豆は食感が苦手で食べられない。

一応聞いてみる。「おせち料理いる?」
べつにいらない、とふたりとも言う。(私はほっとする)。
だって高いし。高い食材つかって、つくったことないものつくって失敗したら悲しいじゃん。 食べてもらえなかったら、泣く。
むかーし、小さいころ、母がつくっていた記憶がぼんやりあるけど、都会から兄が帰ってきてからは、正月料理は焼肉だった。それから母は死んだので、私は料理を習ってないし、おせち料理なんて、よそで食べさせてもらったことが何度かあるかな、という程度にしかなじみがない。かずのことか、スーパーで見ても、高くてひるむもん。

息子には説明する。「うちにはないけど、世の中にはおせち料理というものがあって……」
笑い過ぎて、涙出てくる。ハンデあるよ。こんなの、子どもの学力じゃなくて、母親の文化力を問うような問題だよ。ひどいよ。
ごめんな。かずのこを買う勇気は、ないんだ。