新緑

一雨ごとに季節が移る。
朝、庭に出たら、向かいの森の新緑と、庭のチューリップが鮮やかだ。

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昨日は雨のなか、授業参観。受付でクラス名簿に〇をつけたとき、そういえば今年は、クラス通信にも、クラスの生徒たちの名前がなかったと思う。つまり、クラスの生徒たちの名前を知らないのだ。私はもちろん、息子も。そしてこの「息子も」というところが問題なのである。
で、名簿をもらえないか、そこにいた先生にきいてみる。それは担任に聞いてみないと、と探しに行ってくださるが、担任はいなかった、ので伝言だけ託した。

息子は(それから私も)人の名前と顔を覚えるのが苦手みたいなのだ。自分には自分があたりまえなので、私はずっと苦手に気づかずに過ごしてきていたわけだけど、息子が小学生になって、クラスの子たちに叩かれたり、バカとか死ねとか言われて帰ってきて、誰にされたの? ときいても「わからない」というのは困った。
そこでクラス名簿をみながら、番号と名前と、日ごろの教室でのエピソードとを結びつけて、あれこれあだ名もつけて、クラスメートの名前と顔を覚えるように意識させた。それでも、かたくなに、名前を呼ばず、番号でだけ呼んでいた低学年のころ、息子をいじめて、番号でいいつけられた女子たちが、自分たちを番号で呼んだということを理由にまたいじめたりしてたけど。
そういったことに対応するために、クラス名簿は必須だったのだが。
去年まではクラス通信で、名簿もらってたんだけどな、だいたい6年間一緒ですでに4年目なら、学年の生徒数も少ないし、生徒たちは誰が誰だかよくわかっているから、必要ない、という判断なのかもしれないんだけど。
もう高校生だし、いじめがあるような環境でもないし、私が心配することでもないんだけど。
息子も、そのうち、たぶん1年一緒に過ごしているうちには、クラスの3分の2を占める女子たちの顔も名前もはっきりわかってくると思うし。
で、教室に行って、よくわかった。女子は人数が多い上に、髪型とか眼鏡とか、雰囲気とか、よく似ている。なるほどこれはハードルが高い。しかも、女子の名前はややこしい。難しいと思うよ。

人の名前と顔を覚えるのが難しいのは、視覚過敏に由来する。でもそういうことは、最近まで全然わからなかったから、私は長い間ずっと、自分が人としてどこか駄目なんだろうと、漠然と不安だった。
私は、クラスメイトの名前も顔もよくわからないままに、小学校から大学まで過ごしてきて、ごく親しかった人たち以外は誰が同じクラスにいたか、名前も顔もほとんど覚えていない。あるとき同窓会に行って、なぜみんながそんなに同級生たちのことを覚えているのか、とても不思議だった。
で。誰が誰か、全然わからない同級生ばかりの同窓会で、初めて見る名前、初めて見る顔みたいに思われる、誰か知らない人、を、なんとなく知っている人、なつかしい名前なつかしい顔、にこっそり落とし込む作業は、なかなかスリリングだったのだ。

でも、すこしの努力と少しの工夫でなんとかなることも多い。工夫が必要だと、気づければの話だが。

今日はお隣の奥さん(10歳ほど年上のお姉さん)から、蕨もらった。うれしすぎる。

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子どものころ、蕨摘みは春の日課だった。毎日毎日、卵とじ食べていた。
たぶん、私たちは似ているのだろうと、うすうす、お互い勘づきながら、言葉少なく、でもこころよく、隣人している。

 



 



紫のチューリップとソウルフード

紫のチューリップも咲いた。きれいだわ。

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ベルベットみたい。小さいころにこんな感じの服を着せられたとき、つやつやしている服が、さわると光の加減で、色が変わって見えるのが不思議で面白かった。


紫の、とくると「ガラスの仮面」の紫のバラの人を思い出すわけだけど、いきなり私は悟りました。この世では、誰かが誰かを応援している…。

兄から届いた応援物資のじゃこ天。私のソウルフードですね。ちくわとかまぼこも入ってた。大変ありがたく、息子の弁当に入れたり、つまみ食いしたり。
昨日今日は作ってみたいものがあって、作った。母が死んでからは食べたことがなかったけど。じゃこ天入りのカレーとかまぼこ入りのシチュー。
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昔、肉は高くて、じゃこ天はごく安かったので、母がつくるカレーには肉のかわりに、じゃこ天が入っていたのだった。
ああもう、じゃこ天最強。じゃこ天の味がするカレーだった。あの頃は貧乏人のカレーだったけど、もしかしたらいまは、高級食材入りのカレーということになるのかも。
シチューというものが、我が家にやってきたのは、小学校の高学年になってから。誰が持ち込んだものだろう。母がつくると肉の代わりにかまぼこが入っていた。
ピンクのかまぼこ入れたら、色がかわいかった。
いーや、なつかしかった。
母がいた台所を思い出した。タイルの流し台は窓に向いていて、母が窓から米を投げるから、毎朝雀がにぎやかだった。



蜂とチューリップ

チューリップ咲いた。いっせいに、でもすこし時間差で。日をずらしながら。
きれいだわ。畑の。

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晴耕雨読。晴れたので、私はせっせと草取りする。いちご畑とにんにく畑の。
畑は蜂が飛びまわっている。
数日前に枝豆植えようと思って耕していたら、蜂に刺された。ズボンのすそから入ってきたらしいのだ。私もかわいそうだが蜂もかわいそう。いきなりの暗がりでパニックだったんだろう。
もう3日くらい経つんだけど、まだ真っ赤に腫れてて、少しかゆい。蜂は畑の上で干からびたが。
あれから、頭のなかを ♪ハチのムサシは死んだのさ~♪が流れている。で、歌詞検索。
子どものころよく歌っていた記憶だが、なるほどこんな歌詞だったのか。私が覚えていたのは最初の2行。

 

『ハチのムサシは死んだのさ』
 (作詞:内田良平 補作詞:むろふしチコ 作曲:平田隆夫、編曲:土持城夫

ハチのムサシは死んだのさ
畑の日だまり土の上
遠い山奥 麦の穂が
キラキラゆれてる午後でした
ハチのムサシは向こう見ず
真っ赤に燃えてるお日様に
試合をいどんで 負けたのさ
焼かれて落ちて 死んだのさ
ハチのムサシは死んだのさ
お日様仰いで死んだのさ
高い青空 麦畑
いつもと変わらぬ午後でした

ハチのムサシは死んだのさ
夢を見ながら死んだのさ
遠い昔の 恋の夢
ひとりぼっちで死んだのさ
ハチのムサシは向こう見ず
お日様めがけて剣を抜き
たたかいやぶれて 死んだのさ
焼かれて落ちて死んだのさ
ハチのムサシは死んだのさ
たしかにムサシは死んだのさ
やがて日は落ち 夕暮れに
真赤な夕日が燃えていた


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こちらは庭のチューリップ。蜂もいたけど蜻蛉もいた。向かいの森に鹿がいた。

 

新学期 つづき

散り始めたユキヤナギと咲き始めたチューリップ。

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息子は高校生になった。新しいクラスは、男子と女子の割合が1:2だそうで女子が多い。男子は顔も名前もわかる。女子は同じクラスになったことがある人はわかる。あとはわからん。つまり息子の頭のなかでは、クラスの3割がぼんやりしていて、まだ名前も顔もない、状態。クラス名簿ももらってない、という。
まあそんなもんか、私もそんなもんだったと思うんだけど、ほかの人たちはそうではなくて、そんなに親しくなくても、クラスメイトの名前も顔もしっかりわかっていたりするんだなあと、ずっとあとになって知ったときの驚き。
……いや、難しいと思うよ。人の名前と顔と覚えるの。
名簿なくても、小学校のときみたいに、「たたかれた」「誰に?」「クラスのひと」「名前は」「わからん」…わからんじゃ困る、ということもないと思うので、いいけど。

部活には、新しい顧問がやってきて、新入生(中1生)の体験入部があった。息子、去年まで中学過程の部長をやっていたらしいんだが、やってきた新入生の女の子に、言ったらしい。「できれば、ほかの部活で、人間関係をつくっていくのがいいと思うよ」。
笑ってしまった。弱小部活にせっかく来てくれた新入生に何を言うのかという話だが、それは誠意ある対応かも。
息子が言うには、うちの部活は、どこにも行き場のない連中が落ちてくる沼みたいなところで、顧問は基本、やってこない。部員は、数少ない女子は全員幽霊で、男子は何してるかというと、上級生は数も少ないし不明、下級生も同様、息子たちの学年は7人ほどいるが、ゲームで遊ぶか、ラノベを読むか、ペットボトルのキャップ投げして遊んでいる。たまに誰かプログラミングはじめたりするが、またそのうちゲームに戻っている。息子は電車の動画を眺めて過ごしている……。
でも新入生来たので、対応する。パソコンのタイピングからかなあ。でもほんとに、ここは来ないほうがいいので、ほかのどんな部活がいいかを、別の男子と一緒に考えてあげていたそうである。運動部はいや? 吹奏楽部はブラックだけど、美術はどう? 放送部もいい先輩がいるよ、と、よその部活をすすめているもと部長……。
ほかの新入生、男子のほうは、たちまちゲーム沼に落ちていった、らしい。

ま、楽しい高校生活をね。
私は弁当作り4日め。小学校のころの倍以上はある弁当箱の大きさに、だいぶん慣れてきた。

新学期

向かいの森の桜。昨日の写真。

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今日はもっと満開。ということは、あとは散るだけ。きっと次の雨で散るのだが、それでも今年は、ずいぶん長く楽しめた気がする。
昨日の夕方、2階の窓からお花見。横浜中華街で買ってきたザーサイと山口でパパが買ってきたなんとかという日本酒。
今日は、畑で採れた(勝手に生えている)カンゾウナとノビルでぬたをつくった。
金柑の実がなった。何年前に植えたか忘れた木の。はじめて実がなった。24個くらいあった。どうやって食べようかなと考えるまもなく、かじっているうちになくなりそう。


新学期がはじまっている。息子、高校生になるので、2階の部屋を片付けて、勉強部屋をつくってやったが、なぜかその部屋に、私が遊びにゆき、パパが遊びにゆき、結局、場所が変わっただけで、これまでと同じにひとつ部屋に集っているのだった。ま、ひとりでいて勉強するかって、しないしね。

進級の書類書いたり、書き直したり、雑巾縫ったり。いろいろと想定外の支出があったりして、家のなか微妙に緊張が走る。いやもう、ぎりぎりですからね。
高校過程になると、給食がないので、弁当つくんなきゃ。ということは、私はもうさっさと寝よう。

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庭のムスカリ

春休みの終わりに

春休み最後の昨日は、余っていた青春18きっぷで、尾道・糸崎へ。息子は電車を撮りに、私は桜を見に。

尾道の駅が新しかった。駅を出たら海が見える。
昔、尾道に来たのは、思い出してみると、かれこれ30年ほど前なのだった。青春18きっぷで北海道からやってきた女の子が、尾道に行きたいと言ったので。あのときは文学の小路とか歩いたのかな。大林監督の映画の跡とか。それから海へ行ったかな。あれも桜の季節だった。数年間音信があったけれど、彼女のその後の消息を、知らない。
息子は、以前に先輩と遊びに来てるので、今回は息子のあとをついてゆく。まずひたすら線路沿いに歩くわね。それから千光寺のロープウェー。楠の大木が、こわいほど凄い。千年の歳月を樹はどうやって耐えているんだか。

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山の上で、とりあえずごはん。駅のコンビニのおむすびとお茶。私が食べ終わらないのに、息子は、じゃあちょっと、と坂道降りてゆく。食べ終えてごみを捨てて、それから息子を探しにゆくと、大きな岩に貼りついていた。ここから市街の線路がよく見える、そうで。海が青くてきれいだ。

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林芙美子の「放浪記」の碑。「海が見えた。海が見える。…」このくだり、大好きだった。

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桜は満開少し前。千光寺には寄らず、ロープウェーでとっとと降りて、また線路沿いに歩いて、駅へ。

次に目指したのは糸崎神社。糸崎の駅からちょうどバスの便があってよかった。線路脇の桜は満開。ここ、バスが1時間に1本しかなくて、1時間ひなたぼっこ。
たまに電車や貨物列車が通るときにカメラを向ける以外は、することもない。息子は桜の下に座り込んで「瞑想」していた。離れたところから見ると、ただの黒猫のようだった。

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息子の計算では、この春、私たちは3000キロの旅をしたらしい。

SLと桜

旅から帰って、1日おいて、週末は山口に帰省。帰省の度に、SL山口号を追いかける。帰省の途中の仁保駅で。
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翌日は長門峡駅。時間があったので、道の駅にいたら、そこに模型があった。SLではなく、朱色の気動車が走っていた。そこに家族連れがきて(触らないでくださいって書いてあったんだが)小さい子が触ったもんだ、列車走らなくなった。息子が係のおじさんを呼んで、おじさんとふたり、かれこれ30分ほども修理しようとがんばったが、線路がずれてしまっているし、無理ですねということが判明しただけだった。以前はSLが走っていたらしいが、それも壊れちゃったらしい。係のおじさん、壊れたやつをもってきて、息子のために、わざわざ並べてくれる。ので撮影。

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それから長門峡駅で本物見て、津和野まで。

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津和野で見たあとは、堀の鯉に餌をやる。息子、2歳のころから十数年同じことをし続けて、まだ飽きないらしい。富裕に病んだ鯉たちなので、余計なお世話の餌やりだが。
それから徳佐のしだれ桜見る。

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山口に戻って、吉敷川の桜。

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この時期の帰省は、行く先々で桜がきれいで楽しい。
月曜日、新元号のニュースをおばあちゃんと見る。
元号。れいこちゃん、とか、かずよちゃんとか、子どものころの友だち、近所の子たちのことを思い出した。みんな幸せになっただろうか。
それから山口を出たのだが。中国自動車道が雪のため、冬タイヤでないと走れないというので、途中で高速降りて遠回りして帰る。

我が家の向かいの森の桜も満開。庭の桜も花をつけている。

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