自閉症児のコミュニケーション(アスペルガー症候群、高機能自閉症)その1

自閉症基礎講座の4回目。
自閉症児のコミュニケーション」の2回目。
前回に引き続いて言語聴覚士の先生。今回は、言葉を持っている子どもたち(アスペルガー症候群高機能自閉症)の子どもたちのコミュニケーションについて。

つまり、うちのちびさんについて、ついでにその両親についてのお話だ。いやもう、泣きたいほど(笑いだしたいほど)よくわかる。
さて、復習しよう。いきます。レジメの書き写し。

☆一見、ことばの心配はないように見えるけれど。
一見、おしゃべりで、ことばの心配があるように見えないけれど、

やりとりがちぐはぐ。
話しかたが不自然。
場の雰囲気を読めない。
ことばがあっても相手に伝えきれない。
お互いのコミュニケーションの読み違いによる誤解といったことが、色んなところで、知らず知らずのうちに起こっているかもしれません。

☆説明でわかったことがない

こんなに話ができるのだから、
「説明しなくてもこれくらいわかるだろう」
「手伝わなくてもこれくらいできるだろう」
とまわりからは思われがち。
けれども自閉症の本人には、
わかっていない状態が普通だと思っていたので「わかっていないことがわからなかった」「教えてください」をまったく思いつかなかった。

☆本当は不安や困り事でいっぱい

コミュニケーションのすれ違いが起こっても、本人も相手も起こっていることそのものに気付かなかったり、お互い誤解をして受け取ったままで終わってしまう。
例;「お風呂見てきて」
  →見てきたのに、違うと言われる。ふざけてると怒られる。どうしたらいいの。
どうしたらいいのかわからず、不安や困りごとをひとりで抱えている。
みんなと同じなのに、私だけできない、わからない、だめな私、でもがんばらないといけないと思いこんでいる。
 
そういえば私、昔、子どものころに、「弟を見ていて」と母に言われて、公園で、弟を見ていたことがある。弟が知らないよその子たちと一緒に公園を出て、いなくなっちゃうまで、見ていた。そう、見ていたのだ。
面倒を見る、一緒に遊ぶ、いなくならないように気をつける、いなくなったら母を呼ぶ、というようなことを期待されているとは、思いもよらないことだった。
母は自転車の荷台に私を乗せて、迷子の弟を探しまわったあげく、警察署ですいか食べて昼寝していた弟を連れて帰った。
叱られた記憶がないのは、たぶん弟を探すのに必死だったのだろう。

☆「学校はジャングルのようでした」

360度 予測不可の恐怖
突然耳に入る大きな音→音が心に刺さって痛い、意味と理由がよくわからない。
先生は大忙し(書きながら喋る。唐突に質問する)→複数のことも一度にできない私。席についているのが精一杯。
避難訓練→朝から緊張状態いつ、何が起こるのか、どうしたらいいのかわからない。
口頭での説明は消えてしまう煙のごとし
(小道モコ「あたし研究」)
 
そういえば、授業中にときどき叱られて、教室の後に立たされていたのは、4年生のときの教室だけど、なぜ叱られたのか、なぜ立たされているのか、まったくわからなかった。まったくわからないんだけど、わかろうとも思わなくて、立ってろと言われるので立っていて、それでもって、頭のなかで、先生の背中に見えない矢を、ばしばし放って、あ、肩にささった、とか、残念、届かないで落ちた、とか、空想して授業の終わりを待っていた。


☆一緒に考えてくれる人の存在が必要
「大変だね」と共感し、「一緒に考えよう」という人の存在が必要。
一緒に考えるときに、お子さんが置かれている立場への想像力と理解が必要、そこから支援の手立てがでてくる。

☆コミュニケーションの困難性のベースにある弱さ

○人の立場に立った見方が難しい。
 立場や気持ちがわからない。それぞれの関係がわからない。表情の意味がわからない。
 一見わかっているようだが、形だけの理解あるいは自分なりの推測
相手に伝わるように説明するのが難しい。

○何をどのように行ったらいいかわからない。

○状況を整理し、ポイントをつかむことが難しい。
 何が重要かがわからない。全体の状況がわからない。一部にとらわれる。
 事実はわかるが、その事実の意味がわからない。一部のみしか見ていない。

○言葉以外の、表情や声の調子、体の向き、雰囲気をつかんだり自分で使うことが難しい。
 表情や体の向き等を手がかりにできない。言葉以外のボディサインの理解の弱さ。(言葉による情報伝達は全体の何割かにすぎない。)

○思考の厳格さ、ものごとは白か黒かで融通がききにくい。
 こうときまっているルールに厳格、状況によって柔軟に考えにくい。

○見るのは得意、聞くのは苦手。

○自分の興味や気になるものにひかれやすい。

☆これらの困難性のことばやコミュニケーションへの表れ方

あいまいな表現や冗談、からかいなどの目に見えないことばの理解が難しい。字義どおりに受け取る。
言葉以外の表情や仕草、声の調子などの理解が難しい。
状況とあわせて言葉を理解するのが難しい。
相手の本当の意図がどこにあるのかがわかりにくい。

言葉の意味の取り違い。
コミュニケーションのすれ違い。
ことばを理解すること自体が難しい。
何が起こっていて、自分が何をすればいいのかわからない。

自分から要求したり抗議したりすることを思いつかない。思いついても、だれにどのように、どのタイミングで伝えたらいいのかわからない。
言葉以外の表情や仕草、声の調子などを適切に使うことができない。
場に適切な言葉やふるまいができにくい。
言葉を探すのに時間がかかる。
興味のある話題に没頭する。

状況や相手にあった適切な表現ができにくい。
伝えること自体が難しい。

これらから、まわりでおこっていることがわからず、状況に応じてうまく伝えられないため、うまくコミュニケーションができないということが日常的に起きている。不安や緊張が高くなり参加すること自体を避けたり、逆にまわりに配慮しない自分なりの参加をしがちになる。
会話は複数の人の間で状況が変化していくので、とてもわかりにくい。


(つづく)