嘘をこえて

誰かのかわりに何か本を書くような、ゴーストライターという立派な仕事を私はしたことがないが、
無記名の記事なら、あれこれ書いて糊口をしのいだ日々もある。 誠実に仕事したと思うよ。

それで記者会見のニュース見ながら、ゴーストさんにシンパシー感じたりした。

問題の交響曲HIROSHIMAはずっと前に一度聞いた。ユーチューブで広響の演奏で。
いまどきこんなクラシックをつくる人もいるんだなあと思った。重苦しい曲でこれはしんどい、と思ったけど、しんどいのがクラシックだからしょうがない、と思って、最後まで聞きました。

HIROSHIMAだからこの重苦しさもありだろうと思ったけど、その重苦しさを耐えていると、最期にすこし明るさがくる。
わかりやすいけど長いし、もう一度聞くのしんどいから聞いてないけど、希望より救われなさの印象が強かったけど、まあそれがリアリティかなあと。

交響曲HIROSHIMAは、でも聞いたら涙出るかもしれない。こんな重苦しい曲を、しかも長い曲を、演奏している演奏者たちは、曲の重苦しさに被爆のあとを生きつづける人生のしんどさを重ねたと思う、それはそれで迫ってくるものあったと思う。

ベートーベンの再来というのは胡散くさいと思ったけど、曲は別に胡散くさくない。誠実につくってあるし、演奏は心こもってるし。

ベートーベンでなくても天才や奇跡でなくてもいいんじゃないのかな。詐欺師もゴーストも広響も(CDの演奏はどこがしてるのか知らないけど)、みんなで力あわせてこの程度というところを、大事に思ってあげるのでいいんじゃないだろうか。
なんかふざけた経緯だけど、音楽はあらわれてきたんだもん。

ゴーストさんのソナチネとかシャコンヌとかは、好き。
嘘をこえて、とどくものもあると思う。

☆☆

それで息子には言うわけだ。ほら、嘘をついたら大変なことになるんです。自分が傷つくだけじゃなくて、他人も傷つけちゃうんだよって。

息子は嘘をつかない努力をしているようだ、彼なりに。
宿題すんだ? ってきくと、
「すんだ! ……あ、あ、あ、途中まで」
みたいな返事が返ってくる。

ま、嘘も方便っていう言葉もあるんだけどね。
こういうのって、なんだ大嘘か、わっはっはって、楽しんでいいようなことの気もするんだけど。
懲りずに、いい曲つくってくれるといいなあ。