トランプ

学校から帰ってきた息子が伝えてくれた。放課後、部活でパソコンを開いてニュースを見たんだそうだ。アメリカの大統領選。
なぜこうなる? と息子。
たぶん、みんな貧乏が悪いんだと思うよ、とか、トランプはジョーカーをひいたんじゃないか、とか、親たちはしゃべっていたが。
トランプが大統領職というジョーカーをひいてしまったのか、国民が、トランプというジョーカーをひいたのか。いや、クイーンもまずいよ、とか。

そんなわけで、今日の英語の自習ノート、ハンプティとダンプティとミスターAのおしゃべりはトランプ氏の話だった。なるほど、こうなるのか。

ビッグニュースだ!
何?
アメリカの新しい大統領が決まった。
どっちになったの?
トランプ氏。
おお。ありえない!
そういえば、ぼくらの世界のトランプの兵隊はどうしてる?
彼らはトランプ氏と一緒にやってくるだろうよ。
クイーンと一緒じゃないの? 
ちがう。クイーン・クリントンは負けたんだ。
いずれにしても、ぼくらは変な世界に住んでるよ。
アリスはどうしてる? 
無事だよ。
彼女まだ生きてるの? 
もちろん。アリスは永遠に生きてるよ。
何か聞こえる。しまった。トランプの兵隊たちがやって来る。
52枚のトランプの兵隊が来るぞ。
いや、53枚だ。最後の1枚はジョーカーだ。ジョーカーの顔は大統領のトランプ氏だ。
逃げろ。アリスを探して、連れて逃げろ!

夜、がさがさがさっと、壁のあたりがさやぐ。それから、短く小さく鋭く、チュー、と声がする。まさか、と思って見てみたら、かかっていた。台所の隅のネズミホイホイ。小さいかわいらしいネズミが捕まっていた。もう逃がしてあげられないので、そのまま袋にくるんで、ゴミ箱へ。