いつもいつでもあなたのそばに

子ども、しばらく前に、学校からたくさんプリントをもって帰ったとき、なかに1枚、隣の席の女の子のプリントが混じっていた。
あした、返しなさいね、って言ったんだが、またもって帰ってる。
「返すの忘れたから、あした返す」って、言いながら、返すのを忘れつづけて一週間ほど。
傘を学校に忘れてきた日、明日は必ず雨なのに、なくては困るから取りに行くついでに、女の子のプリントも持って行った。いつまでも返せないなら、先生に渡そう。
ところがその日の放課後、先生は出張だったらしく留守。プリント渡せず、傘だけもって帰った。

なんというかなあ。子どもが読んでる王様の本に、トランプのジョーカーが出てきて、そのジョーカーの女王というかおばさんというか、女の人が、王様から離れない、それでいつもジョーカーをつかまされる王様はトランプ負けっ放しなんだけど、「いつもいつでもあなたのそばに」って、その女王というかおばさんというか女の人は言うんだが、
Nちゃんのプリントって、「いつもいつでもあなたのそばに」のジョーカーみたいだねえ、って言ったら、「いつもいつでもあなたのそばに」のセリフが大好きな子どもが、笑いもせず、なぜかしょんぼり。

つまり。プリントを翌日返しそびれたので、それで怒られるんじゃないかと思って、翌々日にはさらに返しづらくなり、その次の日にはさらに、その次の次の日にはさらにさらに、返しづらくて、返すのを忘れたんじゃんなくて、おぼえてても返せない状態に陥っているんだった。

気持ちはわかる。まあ、一週間ジョーカーとつきあったんだからいいでしょ。先生に手紙書いてあげるよ。それで先生から返してもらおう。
ということで一件落着。

なんだが。クラスに新しい友だちができたって言う。2番男子がいじめるときに、1番男子がかばってくれるんだそうだ。ぼくの絵をほめてくれるって言う。そりゃよかった。という話をしていたときに、ふと。
「でも女子が、ぼくのことをキモいって言うんだ。」
ふん、だれが。
「となりの席の子。」
おお。あのいまいましいプリントの、ジョーカーの女王というかおばさんというか、……おばさんだな。(思うに、小学生女子のほとんどはおばさんである。)
なるほど。それでプリント返せなかったんだ。

いいこと教えてあげるよ。キモいっていう言葉を言う女の子っていうのはさ、私は知性がありません、ばかなんですって言っているのとおんなじなんだよ。
だからさ、そういうばかな女とはつきあわない。相手にしない。
わかった?

だからさ、キモい、程度で傷つくな。
それからプリントを間違えてもって帰らない。ジョーカーをひかない。