都市開発

畑に行く。そろそろいい大きさになるはずのキュウリがない。あったはずなのに、どこにもない。キュウリがあったと思ったのは気のせいかなと思ってふと見たら、キュウリの齧り残しのはしっこがある。タヌキかな。たぶん、タヌキだな。
夜、部屋にムカデがでる。小さいのが。すみやかに叩き殺す。
向かいの森で鹿が鳴いてる。
秋だと思う。衣替えしなきゃ。



息子、紙でつくった建物を並べて、街をつくって遊んでいた。街のあれこれを話してくれるのだが、高級マンションとか、高級レストランとか、カジノとか、なんか、えらそうな街である。
貧乏な人たちはどこで暮らすの。貧乏な人たちはどこで買い物して、病気になったらどこへ行けばいいの。貧しい人が安心して暮らせないような街に、ママは住まないよ。と言ったら、息子、ショックだったらしい。
「明日、明日つくるよ。無料診療所とか。安いスーパーとか。あ、図書館も」。
いやいや、つくらなくていいけど。紙屑がたまるばっかりだから。と思うけど、まあそれは言わない。
「ママの都市開発への批評は、きびしいよ」って、寝るときまで言っていたが、そうじゃなくて、きみの頭のなかがうわずってるんだけど、ほんっとにうわずってるんだけど、きみが大人になって、どんなふうにこの現実の世に足をおろすのか、ぜんっぜん、ほんとに全然、想像もできない。

それで10歳のころ、私は何を考えていただろうと、考えるんだけど、隠れ家をつくっていた。そういえば。山の中の秘密基地とか。裏山につくったし、頭の中でもたくさん考えた。それから、てっとりばやくどこかに行けるので、本ばかり読んでた。

まちがっても、この現実のなかで生きようなんて思ってなかった。思ってなかったよなあ。