パアララン・パンタオ 2014年10月 ③

10月28日火曜日。
朝、ジュリアンの運転で、レティ先生と一緒に出かける。
まず銀行へ。先生たちの給料(半月分)と電気代を払わなきゃ。
銀行でドルを引き出して、でもそこではペソに換えない。マーケットのなかの両替所のほうがレートがいいので、そっちで換金する。一ドル44ペソぐらい。
私も換金するが、1万円が4130ペソにしかならない。しょんぼり。(そして翌日翌々日とさらに円安はすすんだ)

マーケットでお昼ご飯してエラプ校へ行く。
途中の道で、ダンプサイト(ゴミの山)が見える。まわりの本物の山に負けないくらい、立派な山になった。20年前、そこはまだ平べったかった。30年前は谷だった。

Cimg8445



それからまた途中に墓所がある。広い丘で、レティ先生の親族の墓もある。
「ぼくの息子があそこで眠っているよ」とジュリアン。
息子のカイル君はこの2月に4歳で亡くなった。 オールセイントデイ(万聖節)にはみんなでここに来るのだろう。11月1日。
息子の誕生日なので、私はその日帰国する。

エラプ校。
台風で壊れたキッチンの屋根と天井を見る。雨どいがなくなっている。キッチンとトイレの天井3か所に大きな穴があいている。雨季になったら水びたしになるなあ。
「リトルバイリトル(すこしずつ)。すこしずつなおすよ」
午後のクラスにはまだ時間があるから、机の上で昼寝する。

Cimg8456



エラプ校は責任者のベイビー先生のほかに4人の若い女の先生。 マリリン先生、アン先生、リザ先生。アナリザ先生は今年から。
先生たちはここで教えながら、教員試験のためのプログラムを受けて、採用試験を目指している。教員の免許があれば、ふつうの学校で2万ペソほどもらって働ける。パアラランではその3分の1、4分の1しか出せない。
親たちに、反対されている先生もいる(もっと給料のいいところで働け、といわれているのか、教師の試験なんてあきらめろと言われているのか?)けど、あきらめずにチャレンジしようと励ましている、らしい。

ジェイたちは、パアラランをNGOとして登録することと、私立学校として承認してもらうための準備をしている。ケソン市(パヤタス校)とモンタルバン州(エラプ校)の両方に学校があるので、書類が煩雑だし、ジェイたちは仕事もいそがしいし、なかなか大変だけど。
学校として認められる基準として、生徒ひとりあたりの面積があるのだけど、パアラランは敷地は狭すぎるし子どもは多すぎる、という問題がある。
NGOの登録ができれば、あるいは私立学校として承認されれば、行政やNGOからの支援が得やすくなる。教師の給料もあげられるだろう。
と期待してはいる。
準備している。見通しはわからないけど。

Cimg8460



午前中は4~5歳、午後は5~7歳の生徒がくる。午前午後4クラスずつ、1クラス20人くらい。
授業のはじめに全員で、歌を歌ったり、踊ったりする。
「幸せなら手を叩こう」の曲は、子供向けアレンジなのか、すごい速いテンポで、幸せなら、ヤッホー。
「ロンドン橋落ちた」も速いテンポで、エクソサイズしよう、って歌詞になってて、エクソサイズする。とんだり、駆け足足ぶみ、体をひねったり。
それから、それぞれの教室へ。

マリリン先生の午後のクラス。曜日と月の英語の言い方を学習している。ひとりの男の子は、蝙蝠の人形もっていて、蝙蝠と一緒にふらふらと教室をとんでいたけど。ときどき先生にすわらされるけど、またすぐとんでいく。

Cimg8476



パヤタス校にもどると、教室のプリンセスが手を振る。親しみの感情がわきますけど、そのばさばさの髪、なんとかしたいよねえ。
と私は思ったが、レティ先生は、私のばさばさの髪が気になっていたらしい。私がいつも自分で切るというと、ここにいる間にヘアサロンに行けと言う。ここなら安いから。

Cimg8482


夕方、授業を終えたマリアペレ先生と、リサイクルバッグの買い出しにロイダさんちに行く。予算もないので、自分で担げる程度を仕入れ。来月のバザーで売ります。
夕食のとき、先生たちはクリスマス・パーティのダンスとか衣装の話をしていた。どこかにサンタクロースの帽子があるだろう、とか。

レティ先生は薬を飲む。そう言えば、次いつ病院に行くのだっけ。と書類を出して、「10月、もう終わるじゃないか、いいよ、11月に行こう。」
心臓その他、3人のドクターにかかっている。

奨学金を出すよ」とレティ先生が言った。
え?
と、私は耳を疑った。こんなにしんどい資金難がえんえんつづいているなかで、何をまた。

2012年に大学に進学したロレンは1年でやめた。授業料が高かったせいもあるのだが、資金が足りなくて、十分な奨学金を出せなかったのだ。ロレンはそれからジェイのオフィスで働いて、専攻も政治学から会計学に変更して、オフィスの近くのカレッジに入りなおした。いまは半日オフィスで働いて、半日カレッジに通っている。

今度奨学金を出したいと思っている男の子は、17歳で、カレッジに入ったが、お父さんが死んで、1セメスターでやめた。それからお母さんがつくったゼリーの行商をして、家計を助けている。エラプ校に売りに来ているんだ、明日紹介する、と言う。
もうすでに書類もできていて、授業料もそんなに高くないし、交通費はこれくらいだし、と話すレティ先生は楽しそうで、自分の健康の心配させるより、奨学生を支援させるほうが、たぶん健康にもいいだろうと思うほどだ。

夜、雨。