詩人への憧れは、どういうわけだったかなあと考えたら、
幸せについて、誰よりもよく知っているのが詩人だと、思ったからかもしれない。
夢見たものはひとつの幸福……
立原道造の詩を読んだのは中学1年の頃で、どきどきしながら、おぼえた。あのころ暮らしていた田舎の春の景色を思い出して、それがとても幸福なものに思えるのは、道造の詩の功徳があると思う。
そして、あの景色が私のなかにあるからには、私は大丈夫だと、思うのだ。
こないだ読み返していたエミリ・ディキンスンの詩。(中島完訳)
私は荒野を見たことがない
海を見たこともない
だがヒースがどんなに茂り
波がどんなものかも知っている
私は神様と話したことがない
天国に行ったこともない
だが私にはきっとその場所がわかる
まるで切符をもらったように
☆
心のリハビリには、詩を読むのがいい。そのような詩のアンソロジーを心に持っていられたら幸せだ。
リハビリついでに、毎日、感謝したいことを見つけてみようと思った。
そう思ったら、数えきれないほどある。たった数分の間にも両手両足の指の数で足りないほど。
早朝、鳥が鳴いていたこと。朝焼けがきれいだったこと。