☆ラマダン
9日金曜日は、ラマダンで休みだって言う。
ムスリムの人たちが休み? って聞いたら、「みんな休み」って。
クリスチャンは断食しないのに休み? って聞いたら、
「それはイスラムの習慣への敬意をあらわす休日なの」って、グレースは言った。
いいことですね。
パアラランも休み?って聞いたら、レティ先生「さあ、わからない」って言う。
「子どもたちが来なければクラスはないし、子どもたちが来ればクラスはある」明快と言えば明快。
「クラスがあってもなくても、私たちは仕事があるから来るよ」ってマリアペレ。
それで9日朝、子どもたちは来ないので、クラスは休み。
マリアペレとジンは、私が持って帰るためのパヤタスカードをつくる。パアラランのみんながかいた絵を台紙に貼って、子どもたちの名前を書いていく。
んー、まあ、いろいろな絵がある。(笑)
右側は友情に感謝しますという文面になっていて、レティ先生がサインする。寄付の受領証代わりに、スポンサーさんたちにもらってもらう。
グローリアは掃除している。机も椅子も、洗剤つけて磨き上げる。
マリークリスは、裏で、たらいで洗濯している。テリーさんは、台所で何かつくっている。テリーさんのつくってくれるおやつが、おいしくてしあわせだった。カモテ(いも)をふかして、ココナッツパウダーと砂糖をまぶしたのとか。ココナッツミルクに漬け込んだのとか。
何か、くだもののジャムとか。
台所で、子ネズミが、ゴキブリホイホイみたいなのにかかって死んでいた。
パアラランは、いつもきれいに掃除が行き届いていて、鍋もきれいに磨かれていて、来る度に、私もそうしよう、見習おう、と思うんだが、それで、そうできるような気がするんだけど、日本に帰ると、ああ、無理みたい、と思う。
どうすればそうできるのかが、わからない。テリーさんがいてくれたらなあ。
☆ジュリアンの家
マリアペレと一緒に、ジュリアンの家に赤ちゃん見に行く。
ジュリアンの家の近くにマジョリー(レティ先生の姪)一家が住んでいて、マジョリーが洗濯していた。あえてうれしい。元気?
娘のジェシカはもうカレッジなのかな。96年ごろ、マジョリーはまだ2歳だったジェシカを抱いて、パアラランの先生をしていた。
ジュリアンの家に行くと、2階に案内された。え、2階?
家族の寝室で。ベッドがひとつあり、床もマットレスとシーツが敷いてあり、カイル君が寝ている。天井からは赤ちゃんのハンモックが吊るされている。
赤ちゃんは女の子でサヴィエンヌという名前。2か月。よく泣いて丸々太って元気そう。
カイル君は4歳になった。生まれながらの障害で寝たきりで育っている。また2か月ほど入院して、喉と胃に穴をあけた。痰を吸引する機械が枕元に置かれている。吸引はひっきりなし。夜中も。食事は、胃の穴から水とミルクを与えている。カイル君、体は大きくなったよね。手をにぎると握り返す。
毎月、病院にカイル君を連れていく。機械のバッテリーの交換もある。医療費は大変だろう。
寝室に寝転んで、おしゃべりする。
ジュリアンたちに、奨学金を出して、大学に行かせることができてよかったと思った。いい仕事が見つかってよかった。そうでなかったら、カイル君を病院に連れていくこともできなかったろう。
息子に語りかけるジュリアンの声がやさしい。家族の写真はしあわせそうに見える。カイル君、妹も来たし、もうしばらく、このやさしい家族と一緒に過ごせるといいね。
休日のジュリアン、つくりかけのベランダで、廃材をのこぎりで切っている。
もしかして。もしかして、この家の2階は、ジュリアンが自分で作ったの?
「イエース」と、当然のことのように、言うんだけど。
見事だなあ。
こうやって、伝統的なスラムのおうちは、できていくんだなあ。
まだ10代で、パアラランの生徒だった頃にジュリアンがかいた絵を、私まだたぶん持ってるけど、立派なお父さんになったなあ。2階までつくっちゃうんだ。
「貧しさが本当である。貧しさの幸せを恋うる。」
って、中上健次が、何のエッセイか忘れたけど、書いていたのを思い出した。中上健次の作品のすべてを忘れても、この言葉だけは最後まで覚えてる気がするんだけど、ジュリアンの家を出て歩きながら、また思い出した。
☆フィリピンコーヒー
ラマダンで仕事が休みなので、ジンの息子のアチバルもやってきた。
はじめて会ったとき5歳で、アテ・カズミと一緒に日本に行くと泣いて、日本とマクドナルドとどっちがいいかときかれて、マクドナルドと答えて、バイバイと私をふった子は、もう22歳になった。iPadをもっていて、写真を見せてくれる。オフィスの仲間との写真が楽しそうだ。
ジェイコーベンが、たのんでおいたフィリピンコーヒーをもってきてくれる。ほんとうは、レティ先生と私とでタガイタイの安い店に買いに行くつもりだったのだけど、レティ先生が具合悪いので、ジェイに頼んだ。するとジェイは、なんと工場まで買い付けに行った。バザーで売るのに、30個ほどもあればいいなと思っていたのだが、なんと、100グラムパックを100個も仕入れてきてくれた。
なんとか、私のポケットマネーで買えるけど。
100個売れません……。
なので、半分は、9月に帰国する予定の留学生にお願いすることにした。もって帰って、大学祭などで、販売していただきたく。メモおいといたけど、見てくれたかな。どうかよろしくお願いします。
帰国の荷物まとめる。コーヒーがいい匂い。
「あすは台風で飛行機飛ばないよ」といつものようにグレースがからかう。嘘だあ、と言ったら、いやいやほんとだ、とテレビの天気予報を見せられたが、台風がマニラに到着するのは月曜で、明日は土曜じゃんね。飛ぶ。
翌朝、レティ先生は、頼んでおいた書類をせっせと書いている。いつもぎりぎりだが、今回もぎりぎり。お願いです、どうか健康に気をつけて。
6時半、ジュリアンが私を空港まで送ってくれる。カビテの自宅に帰るジンとアチバルも一緒に車に乗る。
帰国。
☆☆☆
9日金曜日は、ラマダンで休みだって言う。
ムスリムの人たちが休み? って聞いたら、「みんな休み」って。
クリスチャンは断食しないのに休み? って聞いたら、
「それはイスラムの習慣への敬意をあらわす休日なの」って、グレースは言った。
いいことですね。
パアラランも休み?って聞いたら、レティ先生「さあ、わからない」って言う。
「子どもたちが来なければクラスはないし、子どもたちが来ればクラスはある」明快と言えば明快。
「クラスがあってもなくても、私たちは仕事があるから来るよ」ってマリアペレ。
それで9日朝、子どもたちは来ないので、クラスは休み。
マリアペレとジンは、私が持って帰るためのパヤタスカードをつくる。パアラランのみんながかいた絵を台紙に貼って、子どもたちの名前を書いていく。
んー、まあ、いろいろな絵がある。(笑)
右側は友情に感謝しますという文面になっていて、レティ先生がサインする。寄付の受領証代わりに、スポンサーさんたちにもらってもらう。
グローリアは掃除している。机も椅子も、洗剤つけて磨き上げる。
マリークリスは、裏で、たらいで洗濯している。テリーさんは、台所で何かつくっている。テリーさんのつくってくれるおやつが、おいしくてしあわせだった。カモテ(いも)をふかして、ココナッツパウダーと砂糖をまぶしたのとか。ココナッツミルクに漬け込んだのとか。
何か、くだもののジャムとか。
台所で、子ネズミが、ゴキブリホイホイみたいなのにかかって死んでいた。
パアラランは、いつもきれいに掃除が行き届いていて、鍋もきれいに磨かれていて、来る度に、私もそうしよう、見習おう、と思うんだが、それで、そうできるような気がするんだけど、日本に帰ると、ああ、無理みたい、と思う。
どうすればそうできるのかが、わからない。テリーさんがいてくれたらなあ。
☆ジュリアンの家
マリアペレと一緒に、ジュリアンの家に赤ちゃん見に行く。
ジュリアンの家の近くにマジョリー(レティ先生の姪)一家が住んでいて、マジョリーが洗濯していた。あえてうれしい。元気?
娘のジェシカはもうカレッジなのかな。96年ごろ、マジョリーはまだ2歳だったジェシカを抱いて、パアラランの先生をしていた。
ジュリアンの家に行くと、2階に案内された。え、2階?
家族の寝室で。ベッドがひとつあり、床もマットレスとシーツが敷いてあり、カイル君が寝ている。天井からは赤ちゃんのハンモックが吊るされている。
赤ちゃんは女の子でサヴィエンヌという名前。2か月。よく泣いて丸々太って元気そう。
カイル君は4歳になった。生まれながらの障害で寝たきりで育っている。また2か月ほど入院して、喉と胃に穴をあけた。痰を吸引する機械が枕元に置かれている。吸引はひっきりなし。夜中も。食事は、胃の穴から水とミルクを与えている。カイル君、体は大きくなったよね。手をにぎると握り返す。
毎月、病院にカイル君を連れていく。機械のバッテリーの交換もある。医療費は大変だろう。
寝室に寝転んで、おしゃべりする。
ジュリアンたちに、奨学金を出して、大学に行かせることができてよかったと思った。いい仕事が見つかってよかった。そうでなかったら、カイル君を病院に連れていくこともできなかったろう。
息子に語りかけるジュリアンの声がやさしい。家族の写真はしあわせそうに見える。カイル君、妹も来たし、もうしばらく、このやさしい家族と一緒に過ごせるといいね。
休日のジュリアン、つくりかけのベランダで、廃材をのこぎりで切っている。
もしかして。もしかして、この家の2階は、ジュリアンが自分で作ったの?
「イエース」と、当然のことのように、言うんだけど。
見事だなあ。
こうやって、伝統的なスラムのおうちは、できていくんだなあ。
まだ10代で、パアラランの生徒だった頃にジュリアンがかいた絵を、私まだたぶん持ってるけど、立派なお父さんになったなあ。2階までつくっちゃうんだ。
「貧しさが本当である。貧しさの幸せを恋うる。」
って、中上健次が、何のエッセイか忘れたけど、書いていたのを思い出した。中上健次の作品のすべてを忘れても、この言葉だけは最後まで覚えてる気がするんだけど、ジュリアンの家を出て歩きながら、また思い出した。
☆フィリピンコーヒー
ラマダンで仕事が休みなので、ジンの息子のアチバルもやってきた。
はじめて会ったとき5歳で、アテ・カズミと一緒に日本に行くと泣いて、日本とマクドナルドとどっちがいいかときかれて、マクドナルドと答えて、バイバイと私をふった子は、もう22歳になった。iPadをもっていて、写真を見せてくれる。オフィスの仲間との写真が楽しそうだ。
ジェイコーベンが、たのんでおいたフィリピンコーヒーをもってきてくれる。ほんとうは、レティ先生と私とでタガイタイの安い店に買いに行くつもりだったのだけど、レティ先生が具合悪いので、ジェイに頼んだ。するとジェイは、なんと工場まで買い付けに行った。バザーで売るのに、30個ほどもあればいいなと思っていたのだが、なんと、100グラムパックを100個も仕入れてきてくれた。
なんとか、私のポケットマネーで買えるけど。
100個売れません……。
なので、半分は、9月に帰国する予定の留学生にお願いすることにした。もって帰って、大学祭などで、販売していただきたく。メモおいといたけど、見てくれたかな。どうかよろしくお願いします。
帰国の荷物まとめる。コーヒーがいい匂い。
「あすは台風で飛行機飛ばないよ」といつものようにグレースがからかう。嘘だあ、と言ったら、いやいやほんとだ、とテレビの天気予報を見せられたが、台風がマニラに到着するのは月曜で、明日は土曜じゃんね。飛ぶ。
翌朝、レティ先生は、頼んでおいた書類をせっせと書いている。いつもぎりぎりだが、今回もぎりぎり。お願いです、どうか健康に気をつけて。
6時半、ジュリアンが私を空港まで送ってくれる。カビテの自宅に帰るジンとアチバルも一緒に車に乗る。
帰国。
☆☆☆