あの鳥たちの向こう側で

詩をみつけたので拾ってきた。落ち葉拾うみたいに、詩が拾えたらうれしい。
小学校の校庭で、掃除時間の子どもたちがちりとりに集めた落ち葉があんまりきれいで泣きそうになった。こないだ、参観日で学校に行った日。
木部一樹というのは、鳥の絵を画く画家さんらしい。



あの鳥たちの向こう側で  (青森の詩人たち 21 木部一樹)

                            伊丹イタリア

鳥たちの向こう側で
鳴いているのはだれだろう
録音されなかったその声が
私たちにはなつかしい
天文学者のだれひとり
見つけられなかった星かもしれない
こどもたちの心の深く
影をなくした母かもしれない
一度迷った海原で
ふたたび迷う漁夫かもしれない
親しい森の向こう側で
ヒトコイシイ
ヒトコイシイと
鳴きやまぬ

あの鳥たちの向こう側で
羽ばたいているのはなんだろう
愚かな今日を越えようと
また目をあげる使徒の背中だ
たちまち国境を消す言葉を
ささやている画家たちだ
渡ってもいい赤や
渡ってもいい黄色や
渡ってもいい青を
身にまとう、うん、花の群れだ
親しい失語の向こう側で
ココニイルヨ
ココニイルヨと
音がする