縄跳び

冬休み最後の日の午後、息子は言っていた。
「あなたの華々しい経歴と、ぼくの度胸があれば、なんとかなります」。
どこでそんな口上を思いつくのか。つまり、だから、縄跳びのコーチをしてくれと、私をくどいているのである。
縄跳び、冬休みの宿題らしいのだが。私に縄跳びの華々しい経歴なんか、ないっ。

いいよ、跳べなくても。
と私は思っている。低学年のときに彼が縄跳びするのを(できないのを)見て、手足の動きのちぐはぐがどうにもならないのを、見るにたえなかったのである。
でも、3年生のときには、大縄跳びで彼のクラスは優勝したらしいので、ぴょんぴょんはねるぐらいはできるようになったのだろうとは思っていたが。

予想以上に上手だった。数回跳ぶと手足があわなくなってくるが、でも跳べている。でもやっぱり見るにたえない。縄跳びカードには、後ろとびとか綾とびとか二重とびとかいろいろ書いてあるが、そんなのしなくていい。転んでけがしたら母さんは泣きます。するな。
両足前跳びだけできそうだから、10回やってごらん。10回できたら20回やってごらん。20回できたら30回やってごらん。

息子、けなげに跳んだりひっかかったりしながら、
「ママは小学生のとき、どうだった」ってきく。
まあ、きみより跳べたけど。両足前跳びなら100回くらいも跳べたかも。あとは駄目。できません。
息子、
「ぼく、小学生のときのママを見てみたかったな」
って言う。
ちょっとどきっとする。
たぶん、私たちいい友だちになれたと思うよ。
「うん、ぼくもそう思うよ」

って言ってるうちに、30回跳べた。すごい。
おしまい。もうこれ以上はらはらして見ているのいやです。無駄に跳ねなくていい。



で、明日から学校なんだけども、昨日も夜中、寝たふりしている息子の手足が冷たい。黙っといてやるから正直に言え、とささやいたら、起きて電車の本読んでいたらしい。
そんなわけで、昼まで寝ているし。

息子と私の間には密約がたくさんある。あれこれのことを内緒にしてもらう代わりに、お米といだり、トイレ掃除したり、息子はするわけなんだけれども、密約の内容を、私は覚えてないんだよね。たぶん、あまりにもささいなことなんだ。

大河ドラマ黒田官兵衛がはじまったが、子どもの官兵衛が小便もらす場面に、わが家は盛り上がった。息子は逃げ出した。
思い出した、彼がトイレ掃除をすることになった理由!