過去の方角から

窓を開けると、緑がなだれこんでくる。

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桜散ったら、いきなり新緑。


人づてに、便りを受け取る。20年以上も前の知り合いから。
驚いた。
東京でばたばた引っ越しをつづけていた頃に、出会った人のひとりだ。あのころ、ばたばたと人に出会い、ばたばたと別れた。あのころはメールもないし、日頃会わなくなると、そのまま音信不通になった。
思い出す努力をしなければ、人は人を忘れてしまうんだなあというのが最近の感慨だけど、思い出す努力、なんて日頃しないし。ある人をずっと覚えつづけているというのは、 なかなか大変なことなんだと思う。私の頭は阿呆だし。

なので、ほんとに驚いた。覚えていてくれたらしい。私も、名前を聞いたら、思い出した。
なんでも、私に心ないことを言ったことがあり、それを謝罪したいって。
そんなことあったっけ、みたいなことだが。
その人らしいと言えばその人らしい。でも喧嘩両成敗と言う言葉もあるのに。
というか、謝ってもらわなければならないようなことでもないし、謝ってほしくないけど。
というか、そんなふうにふりかえっていったら、人生のあらゆる場面、あらゆる光景、出会ったあらゆる人々に対して、私もまた「ごめんなさい」のお札を貼ってまわらなければ、ゆるされないのではないか、という強迫観念におそわれそうになるけど。
あなたが謝ったら私も謝んなきゃいけないだろう。めんどくせえよ。
あれこれ思い出したら、なんかおかしくて笑いたくなるんだけど、一方はまじめに謝罪したいというので、笑いたい自分が不謹慎に思えて居心地悪い。困ったなあ。

傷つけたのは、私のほうだと思うんだ。でも謝りたくないんだ。私はね。