金色ワンワン銀色ワンワン

洪水ちゃんはしゃべりすぎる。手をあげるより先に喋っていたり、当てられなくても答えたり、暴走が止まらない。ほかの人が当てられて、答えにつまっていて、まわりの人たちが、ほら、あれだよ、思い出せよ、と声をかけているのをなぎ倒すように、じれったくて待っていられなくなった洪水ちゃんが「1番の答えは○○です。2番の答えは……」と言い出すので、黙って黙って、と先生たちもまわりの生徒たちも制止するようになった。
ときどき担任はきつく注意することもある。すると一瞬しょんぼりしている。
と息子が言うので、私は思わず、ああ洪水ちゃん、大丈夫だろうか、と思ったが、
「でも1分後には、完全復活している」らしいので、ほっとする。
洪水ちゃんの隣の席のO君は、しじゅう話しかけられるので困っている。話し出したら止まらないし、O君は耐えられないので耳をふさぐのだが、それでも洪水ちゃんは、「文章が終わるまで、話しつくす」のだそうだ。

相手が聞いていようがいまいが、最後まで喋らずにはいられないのは、私の息子も同じなのだった。小学校1年のとき、参観日の授業のあと、担任相手に、自分が考えたじゃんけんのルールをえんえんとしゃべっていたのを思い出すけど。担任はそのとき、教育委員会の人と話していて、息子の話を聞けていないのに、息子はしゃべりつづけていて、止まらないのもわかっているから、私も止めなかった。(あのとき、担任と息子の話にあとから割り込んできたのは、教育委員会の人のほうだったし)。
その後、息子はいじめられて、学校ではいろんなことを警戒するようになり、無邪気に手をあげたり喋ったりしなくなったが、家ではいまも私相手に話が止まらなかったりする。もうその話はいいよ、と言うと、わかったよ、とやめることもあるが、「いいから最後まで喋らせて」と言うこともある。聞いてもらうもらわないより、最後まで喋ることが大事。そういうときは、喋り終えないと切り替えができない、次へゆけないのだ。

昨日、息子がえんえん話してくれたのは、朝の読書の時間に読んでいる本の話。アイヌの昔話で、金色の犬と銀色の犬が出てくる。「金色ワンワンが、なんとかかんとか、銀色ワンワンが、なんとかかんとか」と話してくれるのが、面白かった。やさしい人の家は宝物で埋まり、いじわるな人の家は、犬の糞で埋まってしまうという感じの話。

むかしむかし、私が中学生だった頃、友だちの家で、彼女が読んだ本の話を(たいてい歴史小説だった)、何時間も話しつづけるのを、ずっと聞いていたことなんかを、思い出した。窓の外が夕暮れていって、そのうす紫が、主人公たちが生きていた古代の山河につながっているようだった。



今日のいちご、134個。天気がいいので、草ひきもした。
すべりひゆは、おひたしに。

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