パアララン 5

8月5日月曜日。台風のため、クラスは休み。とはいえ、台風は遠くて、このあたりは普通に雨が降っているだけなのだが、政府が休みと決めたら休みなのだった。クラスがないなら、マットレスを片付ける必要もないので、息子、起きるつもりがない。こんこんと眠っている。

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風に裏山(ゴミの山)の草が鳴る。すばらしいグリーンフィールドだよね、と笑うんだけど。

イエン先生とマイク先生、レイレ先生がやってくる。ジョン・ポールとジェイペロウも。
ジェイペロウは奨学生のひとり。絵の上手な女の子。彼女、デング熱にかかって、しばらく休んでいた。一週間熱があったそうだ。どこの蚊に刺されたのか、わからない。

ヒューマンネイチャーという会社があって、自然化粧品などを扱うフィリピンブランド。貧困地域出身者を多く雇って、生産者に倫理的な価格を払う、人々の幸福を追求するという志ある会社で、『だれも置き去りにしない』という、フィリピンのNGOについて書かれた本にも紹介されていた。ベイビー先生の長女のジョイはもうずいぶん長く、この会社で働いている。
そこで、この会社が扱っているオーガニックコーヒーを、買って帰ってバザーで売る。原価そのものが安くないんだけど、ジョイが従業員割引で買ってくれる。「かずみがコーヒーいるってよー」という話は次から次へとリレーされて、在庫の確認、割引価格の知らせが届く。ジョイがお店にいる間にってことで、グレースとイエンが出かけていく。グレースはそのまま、仲間たちとのミーティングに行き、イエンが重たいコーヒー抱えて帰ってくる。
コーヒー、売れるかはわからないけど、それが心配だけど、残ったら我が家で飲めばいいので、それはそれで贅沢。

グレースのミーティングは登山仲間たちと。登山と植林が、いま彼女のミッションだ。19年前、グレースが心臓病の手術をするときに、日本で寄付を集めたんだけれど、助けてくれた皆さまありがとうございます。とっても頼もしいお姉さんになって、レティ先生を支えています。私たちのごはんも作ってくれた。

 コーヒーが届いたので、荷物まとめる。滞在最終日。

午後、先生たち奨学生たちは、子どもたちのノートの準備をしている。子どもたちのノートに、一冊ずつ、なぞって書かせるための文字や、単語と絵、さらに、ぬりえのための絵をかいていく。(コピー代も高いので、予算がないとこうなるかという…)
できることは、手伝う。息子、ノートつみあげて、飛行機や鳥や魚やゾウさんの絵をかきつづけた。

台風。このあたり雨も止んで風も止んで、何もないが、イロイロでは船が高波で転覆した。ニュースに、同級生の死を泣いている少女の姿が映る。毎年このような映像を見る気がする。
台風は、ルソン島の北の海を横切ろうとしている。飛行機、台風が来る前に、飛べるだろうか。夕方になって、ジュリアンから連絡。翌朝私たちを空港まで送ってくれることになっていたのが、都合がつかなくなったらしい。ということで、グレースとグラブタクシーで行けばいいよとレティ先生言うが、グレースは帰ってくるの?

みんなが帰っていったあと、息子は、レティ先生に、1万円を差し出した。「1万ドルはないけど、1万円ならあるよ」と思いついたのだ。去年、息子がレティ先生から送られた言葉は「インディペンデント」独立しなさいってことだったが、今年は「テンサウザンド」1万、だな。

グレース、深夜1時に帰ってくる。その30分ほど前まで起きていた息子は、グレースが帰ってこなかったら、ぼくたちはどうなるの?と心配していた。それはもう、あれですよ。前の道を、野良犬の糞に気をつけながら荷物運んで、ジプニーの通りに出て、ジプニーに乗って…って、考えるだけでぞっとしますけど、レティ先生はちゃんと手配してくれるよ。

8月6日、午前5時半、私はレティ先生にスポンサーさんへのメッセージ書いてもらって、グレースは息子に、挨拶しておいで、って声かけてくれて、息子はレティ先生に挨拶して、「しっかり勉強して。またおいで」って言ってもらって、グラブタクシーに乗り込んだ。
外はもうにぎやか。6時ころから午前のクラスの授業ははじまるので、通りは登校の子どもたちであふれている。それから街なかに仕事に行く人々。すでに渋滞がはじまりかけている。フィリピンの朝ははやい。

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高速道路からビル街が見えるあたり、ゲームのシムシティの街っぽい。

午前7時半、空港に着く。グレースと別れて(ほんとうにほんとうにありがとう)、空港内に入ったが、なんとなんとなんと、福岡行はキャンセルっていうのだ。
きたよ、ほんとにキャンセルだよ。
受付のお姉さんは、「明日」とそっけないが、いやいやいや、台風の進路を考えたら、明日はもっと飛ばないでしょうよ。食い下がる。日本のどこでもいい、どこか別の場所に着く便がないかしら。関西でも名古屋でも東京でも。福岡便の30分前にフライトの関空行に乗れることになった。ぎりぎりセーフの感じ。
よかったよー。私もうペソも円もないもんね。日本に帰ったらカード使えるけど。

で、無事帰国。しかし日本暑い。

帰りの新幹線の切符を買っておかなくて正解。関空に降りてうれしかったのは、息子。どの電車に乗って帰ろうか。できるだけ安く、しかし、あまり遅くならないうちに。
私鉄を乗り継いで神戸まで。乗る機会のない路線に乗れる。息子は一番前の車両に行く。すると、そこには、息子と雰囲気のよく似た、鉄道ファンの男の子たちがいるのだった。元町で降りたので、中華街で、ザーサイ買う。それから姫路まで出て、新幹線に乗り換えて帰る。
パパ、もよりの駅まで迎えに来てくれる。

次の日の午後まで眠った。

Thank you so much dear friends!