映像記録

そういえば、私はビデオカメラを使ったことがないのだった。
スマホも携帯電話も使わないし、だいたい、そういうものへの苦手意識が強いのだが。たぶん、壊したらどうしようと、怖かったので触らなかったと思う。
ビデオカメラは、息子が生まれたあとに、義父さんが買ってくれた。10年ぐらいは動いたのかな。私が触らなくても、壊れるときは壊れるようで、あるとき壊れた。壊れたので、テープに録画された映像は、見ることができないまま、忘れていた。
忘れていたのを、思い出したので、カメラ屋さんでDVDにダビングしてもらった。
ダビングしてもらったので、それを見てみた。
自分が撮ったわけではないので、息子の小さいときの映像がそんなに残っているとも思わなかったんだけど、這ってる、立ってる、歩いてる、の姿が、それなりに記録されていた。
でも、かわいいかわいい、と思ったのは最初だけ、見ているうちに、疲れてきた。画面のなかで走り回る子どもを追いかけている自分の疲れが、呼び戻されてくるのである。いーや、ほんとにじっとしてない子だったわ。
絵本を読んでやっているお母さんが早口。早送りかと思うほど早口。子どもが、その早口をそのまま暗唱しているのが、なんかすごいけど。
旅先で、息子を追いかけている私の後ろ姿。息子をつかまえた私が、戻ってきて、パパに言う。「カメラまわすの、やめてくれる? 私がひとりでこの子を追いかけんならん」
とすごく怒っていた。
……忘れていた記憶は、忘れていたほうがしあわせだったりするかもしれない。
面白くないこともないけどね。

咳がつづく。動く度、声を出す度に咳き込む。なんの咳だろうなあ。無駄に疲れる。