姥捨て


 雨は夜明け前にまた雪に変わったようで、昨日もうっすらと雪景色。
 雪だるまは、雨でくずれたうえに雪をかぶって、なんとも奇怪な雪の塊と化している。それが4体ならんでいるのは、なんというか、姥捨ての野に捨てられた老人たちが身を寄せあっている姿に見えた。
 むかし読んだ姥捨ての小説、深沢七郎楢山節考』や、村田喜代子『蕨野行』のことなど思い出した。
 『蕨野行』も、最後の場面は雪景色だった気がする。姥捨ての爺婆たちの姿は、むごくもありながら、景色はどこかほのぼのと白い光を放っているような印象だった。村田喜代子の小説はどれも、ふかくからしずかに発光しているひかりがある。そのひかりがあたたかい。

 雪は重たくなっていて、道の雪はシャーベット状だ。雪かきのスコップにヒビが入っていたのが、ついにわれた。「軽くて丈夫」なんてシールが貼ってあるが、嘘である。軽いのだけがとりえだった。次の雪までに新しいのを買わなければ。
 向かいの森のモミの巨木は、天然のクリスマス・ツリー。溶けかかった雪がぼたぼたぼたぼた落ちていた。