どくだみ


 昨日の朝、苺10個摘む。今朝8個摘む。小さななめくじがついてくる。緑の蛙もぴょんぴょんとんで、子どもをこわがらせた。
 保健センターで健康祭のようなものがあって、未就学児童の歯のフッ素塗布を無料でしてくれるというので、午前中行ってくる。タオルと歯ブラシと、それからクイズの景品のとれたて野菜、ねぎと小松菜をもらった。うれしい。

 庭は、ユキノシタの白い花がとてもきれい。葉っぱは昨日の晩のおかず。天ぷらにした。
 どくだみの花も咲きはじめた。すこし摘んで吊るす。干してお茶にするのだ。黴にやられませんように。

 学生の頃、ほんの3か月だけ下宿したアパートは、庭にどくだみが群生していた。ちょうど今ごろの時期で、白い十字の花が雨のなかで、きれいだった。大学にも行かないで、雨の1日、窓からずっと庭をながめていたりしたことを、妙に鮮明におぼえている。
 古い家の奥の半分を学生に貸していて、女子学生が4人下宿していた。一人暮らしの大家のお婆さんはいつも着物姿だった。会うと、小言が長いので、苦手だったが。
 庭の隅に風呂があって、ゴエモン風呂だった。風呂焚き当番があって、その一週間は、夕方毎日、風呂を焚く。オガライトというおが屑を棒状にかためたものをくべる。風呂焚きは好きだった。雨のなか傘をさして、風呂焚きの炎を眺めながら、拝火教という宗教もあったのだ、と思ったりしていた。世界史のノートに、「拝火教(ゾロアスター教)」と書いたことを思い出したりした。

 そのアパートを出た理由が何だったか、はっきりとわからない。たぶん何か息苦しくなっていたのだろうか。何年前か、そのあたりを通ることがあって、もうあのお婆さんは生きていないだろうが、家はどのあたりだったろうと探してみた。そのあたりはなんだかすっかり変わっていて、新しいビルになっているのか、駐車場になっている場所がそうなのか、どこにもあの家はなかった。
 どくだみの白い花が雨のなかできれいだった、19歳の春から初夏の季節を暮らした家。