通行止め


 「あめあめふれふれ…らんらんらん」と毎日子どもは歌っているけれど、そんなのんきな雨ではないと思う。このあたり、今のところたいしたことはないけれど。
 雨つづきで外に出ていないからだろうか。ここ数日、子どもは夜になっても眠らない。昼間寡黙な子が、さあ寝ようと電気を消すや、うるさくなる。
 「わたしはホッホ」(おかあさんといっしょ)、「またあおうね、またくるね」(出どころ不明)、「ぐり、ぐら、サンドイッチ」(絵本)、「でんでらりゅうば、でんでらでんでら」(にほんごであそぼ)、「どんぐりやまのたぬきさん」(どんぐりころころとげんこつやまのたぬきさんが混ざった)、「ささのはたんざくのきばにかいた」(1番と2番が混ざった)、「こっぺぱんふたつまめみっつ」(絵かきうた)
 たっぷり1時間ほどもしゃべりつづけ歌いつづけるのを聞いているうちに、子どもより先に私が寝ている。

 昨日の午後、雨がやんだので、デパートに子どもの帽子を買いに行く。去年のはもう小さくなって、それで今は、私が余り切れでつくった三角帽子(折り紙のカブトみたいなかたち) をかぶせているが、これもそろそろ小さい。
 義母にもらった商品券で帽子を買う。長く使えるようにすこし大きめのを買う。デパートの片隅には子どもの遊ぶスペースがあって、大きなすべりだいがある。しばらく遊ばせた。どこかで体力を消費してもらわなければ。

 川に出ると、さすがに水量が多い。去年の夏の台風ではこの川の水があふれて、川沿いの家々が床上浸水したのだった。そのときに通行止めになった山裾の道が、あれから10か月たった今も通行止めのまま。市にお金がないのだろう。近くには、建設途中で途切れたままの道路もある。これも予定の資金が、別の場所の台風で壊れた道路の修復にあてられて、中断したらしい。それから何年たっているのやら。

 夜になってまた雨。外に出ると、向かいの森の木々の葉の水滴が、電燈のあかりをはじいて、きらきらしているのが、なんだか夢のようにきれいで、まるで蛍みたいだと見とれていたら、ひとつだけ変わった光り方をしていて、葉の裏に一匹、本物の蛍がいた。

 雨音がはげしくなってきた。このあたりも何年か前には、道の向こうの山で鉄砲水が出たのだ。大きな被害だった。

 遠い国では、爆弾の雨も降っている。