臓器売買

 驚いた。「臓器売買か、宇和島の病院に強制捜査」というニュースをいま見た。私の故郷の話ではあるが、見覚えのある病院の映像だが。腎臓移植をめぐって売買があったのではないかという話だが、ああ、お金がないんだろうなあ、とまず思ってしまった。故郷にいるとき、そしてその後の風の便りでも、わが家も含めて、金に困った人たちの話には事欠かなかったせいでもあるんだろうが。親戚中から金を借りて返さないから憎まれているとか、その月暮らすための、ほんの数万円ほどが工面できなくて、消費者金融に借りに行ったとか、そんな話。
 何年か前にフィリピンに滞在していたときに、テレビのニュースで見たのが、スラムの人たちが生活の困窮のために腎臓を売って金を得ている、という問題だった。けっこうな金額だったのではないだろうか。とはいえ日本円では20万円か30万円だった。あるスラムでは多くの住民が腎臓を売っていて、腹に大きな傷跡のある人たちの姿が映されているのは、見ていて震えがくるようだった。いくら金のためといえ、臓器を売るなんておそろしい話だと思えたが、それでもまだスラムで起こりうる不幸な話のひとつという認識だったけれど、フィリピンのスラムで起こっているようなことが、この国でも起こるようになったんだろうか。こんなに身近な話になってしまって。
 
 追記。夜のニュースによると、借金のカタに腎臓を売ったというようなことでなく、金の問題であるよりはむしろ、情の問題であるようなのだが、情に金がからむと地獄の沙汰になったりしないだろうか。逮捕されたふたりの住所も映像で流れた警察署も、私が子どもの頃暮らした場所のすぐ近く。いま親が暮らしている場所からも、すぐ近く。犯罪であるかないかはともかくとして、これは、幸福な光景であるんだろうか。