友よ。
君はいつか 木で何かの小さな像を刻んで持って来てくれて
「なぜ 僕にも何か作ってくれないのだ?」と そう言った。
何が欲しい と僕が尋ねると 君は「箱」と答えた。
「何に使う?」
「物を入れる」
「どんな物を?」
「君の持っているものを何でも」と君は言った。
さて これが君に献呈するその箱だ。
僕の持っているほとんどすべてのものが中に入っているが
まだ一杯になってはいない。
苦悩も興奮も この中に入っている。
快、不快、よこしまな思いもあれば、殊勝な心掛けもあり──
考案の楽しみ、そこばくの絶望、言うにいわれぬ創造の喜びも入っている。
それから それらすべての上に、僕が君に対して抱いている感謝と愛情の全部が入っている。
それでも まだ 箱は一杯にはなっていない。
                     ジョン・スタインベック
 
 
 中学を卒業するときのサイン帳に、「イマジン」とならべて友だちが書いてくれたもう1篇の詩。スタインベック、とあるから、きっとスタインベックの詩なのだが、この詩が載っている本を、まだ見たことがない。この詩はどの本に載っていたのか、聞きたいと思っていたが、高校で同じクラスになると、かえって聞きそびれた。高校を卒業してからの彼女のことを知らない。