綿の国星

「思いは うつりかわり うつりかわり かげろうのよう
ひとつの事を 考えつめようとしても もう次の考えに うつってしまいます
外のけしきが一日一日と うつりかわってゆくからです
 
おばけのような桜が おわったとおもうと 遅咲きの八重桜
すみれや れんぎょう 花厨王
黄色い山ぶき 雪柳
なんとすごい 
なんとすごい 
季節でしょう」
        大島弓子綿の国星』 
 
 「なんとすごいなんとすごい季節でしょう」という言葉、ふと思い出して気になって探して、とても久しぶりに(高校生のとき以来だ)読み返したまんが。大きくなったら人間になると信じているチビ猫の話。でも猫は人間にならないと知るときの場面が好きだった。
 「鳥は鳥に 人間は人間に 星は星 風は風に」とある、そのあとに胸のなかでおもったものだった。私は私に。 
 
 昨日、川でクレソンを摘み、道端でつくしを摘み、港に行き、港から電車に乗る。電車に乗っても子どもはなお「でんしゃにのる、でんしゃにのる」とうるさい。乗ってるでしょうって。平和公園に行くと、綿菓子のような桜がふわふわ咲いている。でも子どもは桜どころではない。「とりさんにあいさつするの」まではかわいかった。鳩の群れを見つけるや、「つかまえろー!」と叫んで追いまわすのだ。だれがきみにつかまるものか。 
 知人の老夫婦の家に寄り、それから昔のバイト先の店にクレソンをもってゆき、ご飯を食べて、ハンバーグとお菓子をもらって、帰ったら、車のなかでは寝ていたちびさん、家にはいったとたんに、目をさまして大泣きである。「おうちにかえらないのー!」と叫ぶ。「ドアをあけてー!」「おそとにいくのー!」「でんしゃのるのー!」
 外はもう真っ暗だが、泣いてる子どもに何を言ったって無駄で、しょうがないので、懐中電灯もって、近所をまわって、スーパーまで買い物に行った。そんなこんなでようやく寝たのは深夜2時。遊びに行くと、そのあとが大変だ。興奮がおさまって日常に着地するまでが。