若きウタリに

昨夜、NHK教育で「僕たちのアイヌ宣言~自分と民族のはざまで~」という番組をやっていた。若いアイヌの人たちの姿が印象的だった。

番組のなかで、アイヌ歌人、パチェラー八重子(1884~1962年)の短歌を、アイヌの青年が、ラップにして歌っていた。

「若きウタリに」という歌集。夏に知人にもらって読んだ。
アイヌに生まれ、宣教師バチェラーの養女となった八重子は、伝道につとめながら、同族(ウタリ)を思う悲しみを短歌につづった。本歌集は、新村出、佐々木信綱、金田一京助が「序」を寄せ、昭和六年に刊行された。」

日本語とアイヌ語の混在した歌は、読んでいると、日本語の部分もアイヌ語の響きのように聞こえてきて、それがとても不思議で、新鮮だった。それは、とても敬虔な響きで。

青年に歌われていたのは、この歌。
「ウタシパノ ウコヤイカタヌ ピリカプリ 忘るなウタリ 永久(とこしへ)までも」
(互いに尊敬しあう清らかな魂を、同胞たちよ永遠に忘れてはいけない) 
「ふみにじられ ふみひしがれし ウタリの名 誰しかこれを 取り返すべき」

80年ほど前の歌が、現代の「ウタリ」に、歳月の隔てもなく、まっすぐに、魂から魂に届いていることに、胸打たれました。

でもそれは簡単なことでなく、自分がアイヌであるということをどう受け入れるかとか、葛藤の果てに開かれた魂があって、彼女の歌が届いたということなのだと思います。

ウタシパノ ウコヤイカタヌ ピリカプリ