ことばをうたう

ここんとこ毎晩、寝る前に読まされるのがこの本。「子ども版声に出して読みたい日本語」の古文。春はあけぼの、からはじまって、平家物語曽根崎心中方丈記徒然草、おくの細道、源氏物語
祇園精舎の鐘の声」とか、私が中学生のとき暗記したのを、ちびさん、もう覚えてるよ。で、私と交代で読んだり、一緒に読んだりするんだけど、面白いのは、ちびさん途中で歌い出すんだ。平家物語の琵琶法師の絵を見て刺激されるんだな。だれがおしえたのか、琵琶のことを「これはねえ、むかしのギターなんだよ」といい、それからへんな節回しで、歌うのだ。なんて形容していいかわかんないんだけどさ。歌うんだよ。へんな節で。
最後のページの「源氏物語」まで歌い通したら、電気を消して、真っ暗のなかで「曽根崎心中」の「われとそなたは、めおとぼし~♪」をママに抱きついてもう一度歌って、寝ます。

で、朝、幼稚園バスに乗るところまで歩きながら歌っていた。「ぎおんしょうじゃのかねのこえ~♪」ひきつづいて「あめにもまけず~♪」今朝、雨だったからさ。

すどうさんが送ってくれた伊津野重美さんの短歌と詩の朗読のDVD聴いていたら(すどうさん、ありがとう、また感想書くねー)、ポーランドエヴァ・デマルチクという歌手を思い出した。はじめてCDで聴いたとき戦慄した。一曲一曲、すべて歌い方が違う。震えるようだったり叫ぶようだったり。感動したので、人に勧めたが、喜んでくれる人もいたが、かんべんしてくれ、聴きとおせない、という反応もあった。私は一時期、憑かれたように聴いていた。
93年だったかな、たまたま来日コンサートがあって、行ったんだけど、ぶったまげた。黒ずくめのおばさんが、舞台の真ん中で歌う。歌う以外、ただ一言も喋らない。終わったとき、アンコールの拍手がなかった。あまりに圧倒的で、観客がそれ以上聴き続けることができなかったからだ。私は心臓が破れそうだった。

↓聴きたくなったので探してみた。「ジプシー女」。マンデリシュタームの詩を本人が訳して歌ってる。

「ジプシー女」

修道士たちがお茶を飲む 塩をひとつまみ
彼らをからかうジプシー女がひとり。
ジプシー女はシーツにすわり
ちらりと艶かしく片目で射る。
惨めなたのみごとを口のなかで噛みつぶしながら
夜明けまで彼らと一緒に座っていた
無心しながら──旦那 金をおくれよ
狂気でも なんでもいいからさ スカーフでも
   過ぎ去ったものは帰らない
   樫のテーブルも 盆のナイフも
   パンの代わりには 太鼓腹のはりねずみ。
   歌いたくて歌えなかった者たち
   だからおとなしく弓型になって
   庭へとひしめきあったせむしたち。
(以下略)