「アボン小さい家」の今泉監督から

9月末の台風16号はマニラ近辺に洪水被害を及ぼしましたが、17号はルソン島北部に大きな被害をもたらしたようです。
北部山岳地帯へは、15年ほど前一度だけ、でこぼこする道を10時間以上もバスでゆられて行ったことがありますが。

映画「アボン小さい家」を制作した今泉監督(いま北部ルソンに住んでいるようです)からの台風被害への支援のお願いメールを、転載します。すこし長いですが、現地の状況、というか、置き去りにされている地方の様子がよくわかります。

こんなふうに、台風被害などで田舎で生活できなくなった人たちが、都市に出てスラムの住民になっていくのだろうなあと思います。
パヤタスにも、台風で家を失って田舎から出てきた、という人がたくさんいます。
故郷を離れずに、生活の立て直しができますように。



映画「アボン小さい家」をご支援いただいた皆様へ

台風17号の北ルソン山岳地帯における被害に対する義援金のお願い>

北ルソンで映画を制作しフィリピン北部山岳地帯で映画巡回上映のボランテイア活動をしている今泉光司です。この山岳地帯は終戦時多くの日本兵が飢えと病気で亡くなった最後の山です。日本の皆様も台風による被害があり、救援活動がされているかも知れません。そんな時に申し訳ないのですが、フィリピン国内でも報道されていない深刻な台風被害がぞくぞくと山岳地帯の町バギオに報告され、犠牲者が運ばれて来ています。映画をご覧になった方々は私の説明でお知りになった方も多いと思いますが、このイゴロット山岳民は、首都マニラ及び低地の人々から見下げられてきた人々です。そのせいもあり、今回世界中から集められた義援金のほとんどはマニラ周辺やタルラック、ヌエバイシハ、パンガシナン他の地域に配布されてしまい、続けてやってきた大きな台風17号がほぼ一週間居座って大量の雨を降らせた被害には回ってきませんでした。これまで私は緊急支援活動はしませんでしたが、今回は私がお世話になり関係してきた地域での被害がぞくぞく報告され、黙って見ている訳には行かなくなりました。

ひどい被害が報告されてきた地域は、ベンゲット州アコップのパスドン村、アバタン、トゥブライ、マウンテンプロビンス州タジャンなどです。戦前に旧日本軍が整備した山岳地帯の幹線道路ハルセマ・ハイウェイは何ヶ所にも渡って地滑りが起きており壊滅的な被害になっています。今月中の復旧が難しいとも言われています。したがって多くの村々が現在孤立しています。その中でもパスドン村はバギオから30km地点のアコップ・サヤンガンを西に入ってさらに25kmくらい行った最後の村です。ベンゲット州を流れる大きなアンブラヤン川の下流が村の中央を流れる美しい田舎の村でした。そこで10月9日(金)の深夜2時ごろに大きな山崩れが起き5件の家が埋もれてしまいました。すぐさま村人たちが助けに行き、埋もれた人々を掘り起こし、町の教会に運んで待避しました。しかしあろうことか今度はその教会の裏山が崩れてしまい、救助された人々、救出した人々が生き埋めになってしまいました。町の人々の必死の救助で3人以外は救い出されましたが、初めに救助されたうちの2人が死亡、一人が行方不明になりました。2度目の地すべりで村の教会と町会ホール、クリニックと学校の一部が壊滅し、その奥に広がる村の田んぼがすべて土砂で埋まりました。

複雑骨折や頭部外傷など深刻な負傷者が9人いました。明け方の4時から村人約20人が動けなくなった人を担ぎ、にわかに作った担架に乗せて、豪雨の山道を約25キロ離れたハスセマ30km地点のアコップ・サヤンガンの病院に運びました。途中の村々からボランテイアの救助人が参加して、負傷者を担いで山中を歩き、夕方やっとサヤンガンにたどり着きました。しかしその病院では手におえない6人の深刻な被害者を担いで、翌朝こんどは30km彼方のバギオ市まで運んで行きました。その途中自分も力を貸そうと言うボランテイアが加わって、最終的におよそ70人の人々が6人の犠牲者を担いで、いくつも山を越えて夕方5時過ぎにバギオのジェネラル・ホスピタルにたどり着きました。70人の担ぎ手たちも疲労困憊していましたが、すぐにそれぞれに村に帰ったそうです。

昨日私は収容された病院に行ってきました。6人のうち3-4人は手術が必要で、一人はベッドで輸血をされていました。輸血費用と手術費と薬費用がかかり、今各方面に支援をお願いしています。国内機関に集まった義援金は、前の台風の洪水被害に配布してしまい、残っていません。山岳地帯の山奥の村にはマスコミも政治家も興味を示してくれません。村全体にも深刻な被害があり、今後の生活の目処が立ちません。せめて病人だけでも何とか支援したいと思っております。

パスドン村の川の横にあった田んぼはすべて土砂で埋まってしまい、収穫直前だった田んぼ及び野菜畑も全滅になってしまいました。したがって現在120家ある村に食糧の補給はありません。隣村からの道が寸断されてしまい、村はまさに孤立しています。私も何度も行ったことのあるこの村人は、イバロイ族の大変にシャイですが勇敢な働き者の男たちの村です。120家あると言われる村の50家は深刻な被害にあっていて、少なくてもこの先3ヶ月どうやって食いつないでいけばいいのか目処が立っていません。

今回の台風17号は過去最悪で、通常の台風の14倍の雨量があったといわれています。数字はフィリピンではいつも疑わしいのですが、6・7日間、昼夜に及ぶものすごい豪雨を経験した私自身としては、大げさな数字ではないように思えます。私の住むバギオの隣町ラトリニダッドでも、道と言う道はすべて激流の川でした。夜は暴風雨と揺れる木々の音でうるさくて眠れません。それほど激しい風雨が止むことなく約1週間降り続き、よくもこんなに多くの雨が尽きることなく降り続くものだと思っていました。おかげで低地の町村はすべて深く水に浸り、すぐ下のパンガシナンでは、1mの水が3日も引かなかったほどです。世界中からの緊急支援がすぐさまそこに集められました。「低地は大変だ。高地は洪水がなくて幸せだ」などと話していたのですが、とうとうバギオ・ラトリニダッドでも多くの地すべりがおきてたくさんの犠牲者がでました。私の居候している家の向かい側の山の斜面が地すべりし、現在までに70人近くの遺体が発見されています。しかし町で起こった地滑りにはすぐにレスキュウ隊の救助がありましたが、山奥の被害は何も報告されていません。ハルセマ道奥地のすべての村々が現在孤立していますが、国内でそういう報道はありません。バギオから約80kmのアバタンの市街地でも大きな地すべりがあり現在27人の死亡者が確認されています。他にもマンカヤン、タジャンで多くの家が飲み込まれました。バギオ周辺の大きな被害では早く救援が行なわれ、多くの救援物資も運ばれているのですが、山岳地帯奥地では報道すらありません。

今後しばらくの間、映画の巡回上映に伴いこれらの村々の救援活動をして行きたいと思います。どうか日本の皆様、ぜひこの山の村々の救済にご支援いただけますよう、義援金をお頼みいたします。

今泉光司 email;imakoji2@aol.com
(フィリピン)#94,Lubas, La Trinidad, Benguet, 2601 Philippines,
携帯電話63-927-450-4729,
(日本) 東京都台東区元浅草4-8-5、特定非営利活動法人サルボン 電話03-3843-0877


義援金振込先
郵便口座名 「トクヒ、サルボン」
口座番号 00160-7-58096
*「台風支援金」とお書きください。