てふてふ

あいつが謝ったりするわけないじゃないか、
と息子は言っていたが、
ミッキーは謝ってきたらしい。

息子、ミッキーに言ったらしい。
「軽はずみなことするんじゃないよ。他人の気持ちに興味本位で踏み込んで勝手に踏み荒らすような、軽はずみなことやってるから、成績だって悪くなるんだよ」
ミッキーはすこし狼狽したふうだった。

それでもミッキーは将棋しよう、とやってくるし、ついつきあってしまうんだが、息子、
次の日はがんばってミッキーを避けた。それが露骨だったので、
なんで避けるんだよ、と問い詰められた。
「もういいんだよ」と息子は言った。
どういうことだよ。
「用済みってこと」
なんで。
「だって、おまえだめじゃん」
何がよ。
「すべてにおいて駄目だよ」
なんでよ、おまえだって駄目なとこあるじゃん。
「そんなこと、他人の恋を勝手に終わらせるようなやつに、言われたくないよ」
うわあ、そのことだったら、あやまりたいと思ってるよ。
(でも、あやまってないし、こいつは絶対あやまらない、と息子は思った)
「もういいんだって。いいからあっちに行けよ」
それで気まずくなってミッキーはあっちに行った。

そういったあとで息子、これでは弁護士が「あんた馬鹿だから、もういい、あっち行って」とミッキーに言うのと同じじゃないか、と思うには思ったが。

このまま絶交でいいよと息子は思っていたが、
ごめん、もうゆるしてくれよう、たのむよ、ゆるしてくれよう。
と次の日ミッキーは言ってきたのだそうだ。
なので、「しゃあないなあ」とゆるしてやることにしたそうである。
一件落着してしまった。

それから、来週の百人一首大会に向けて、ふたり仲良く作戦会議したということらしい。クラス代表+補欠は、ほかに、弁護士と罵倒観音ともうひとり。なんてとりあわせだ。
チーム名はミッキーの提案が支持をあつめて「てふてふ」になった。

んー、まあ、韃靼海峡を渡るてふてふもいるそうだから、がんばれ。