小さい白いにわとり

昔、私が小学校1年のころの国語の教科書に、小さい白いにわとりのお話があった。


 「小さい白いにわとり」 ウクライナ民話

 小さい白いにわとりが、こむぎのたねをもってきて、みんなにむかって言いました。「だれがたねをまきますか」。ぶたは「いやだ」と言いました。いぬも「いやだ」と言いました。ねこも「いやだ」と言いました。小さい白いにわとりは、ひとりでたねをまきました。

 小さい白いにわとりが、みんなにむかって言いました。「だれがむぎをかりますか」。ぶたは「いやだ」と言いました。いぬも「いやだ」と言いました。ねこも「いやだ」と言いました。小さい白いにわとりは、ひとりでむぎをかりました。

 小さい白いにわとりが、みんなにむかって言いました。「だれがこなにひきますか」。ぶたは「いやだ」と言いました。いぬも「いやだ」と言いました。ねこも「いやだ」と言いました。小さい白いにわとりは、ひとりでこなにひきました。

 小さい白いにわとりが、みんなにむかって言いました。「だれがこなをこねますか」。ぶたは「いやだ」と言いました。いぬも「いやだ」と言いました。ねこも「いやだ」と言いました。小さい白いにわとりは、ひとりでこなをこねました。

 小さい白いにわとりが、みんなにむかって言いました。「だれがパンにやきますか」。ぶたは「いやだ」と言いました。いぬも「いやだ」と言いました。ねこも「いやだ」と言いました。小さい白いにわとりは、ひとりでパンをやきました。

 小さい白いにわとりが、みんなにむかって言いました。「だれがパンをたべますか」。ぶたは「たべる」と言いました。いぬも「たべる」と言いました。ねこも「たべる」と言いました。


お話はここで終わる。小さい白いにわとりはそれからどうしたと思いますか、と以前息子に聞いたら、小学3年生だった彼は、「小さい白いにわとりは、みんなにパンを分けました」と答えた。いい子だったのだ。
さて、それから5年後の息子、「みんなにパンを分けました」までは同じだったが。
「それから小さい白いにわとりは、ひとりでごちそうを食べに行きました」とか、「小さい白いにわとりは、みんなに罰があたる……じゃなくて、みんなが改心するのを期待しました」とか、言うようになったね。
「小さい白いにわとりを、みんなは潰して食べました。証拠隠滅」と言ったのはパパ。「五濁悪世はこんなもんだろ」

掃除時間、班の人たちが働かないので、息子はひとりで机を運んだそうだ。もちろん他の人たちは叱られたが、「叱られても3歩歩くと忘れるんだ、男子はふざけるし、女子はおしゃべりする」。いまの班にいろいろ不満があるらしい。でも、3歩歩くと忘れるって、君がいつもパパに言われてることじゃん。

他の人たちがどうかは関係ないよ、自分がどうするかは、きみ自身のモラル・コンパス、良心とか倫理基準の問題。小さい白いにわとりは、ひとりで仕事してるでしょ。ひとりでできない人は、みんながいてもできないと思うよ。小さい白いにわとりはひとりで机を運びました、でいいんだよ。
でも、きみの場合、他の班の人たちが手伝ってくれたそうだし、とってもしあわせと思いますけどね。