手元にある魯迅の本は昭和42年発行のもので、「狂人日記」の最後のくだりを、竹内好はこう訳している。
「 十二
考えられなくなった。
四千年来、絶えず人間を食ってきたところ、そこにおれも、なが年暮らしてきたんだということが、今日やっとわかった。兄貴が家を管理しているときに妹は死んだ。やつがこっそり料理にまぜて、おれたちにも食わせなかったとはいえない。
おれは知らぬ間に、妹の肉を食わせられなかったとはいえん。いま番がおれにまわってきて……
四千年の食人の歴史をもつおれ。はじめはわからなかったが、いまわかった。真実の人間の得がたさ。
十三
人間を食ったことのない子どもは、まだいるかしらん。
子どもを救え…」
大学の最初の年の前期ぐらいしか私はまじめに大学に行ってないが、かろうじてまだ行っていたときに、中国語のテキストにこの最後のくだりがあった。
「難見真的人!」は「真実の人間の得がたさ」と訳されているが、「まっとうな人間に顔向けできない!」であるべきだと、先生が言った。実際、竹内好のその後の訳では「まっとうな人間に顔向けできない!」となおされていた。
「狂人日記」戦慄して読みましたが。
そんなわけで、テストの答案には「我看不憧(わかりません)」と書いてすませた不勉強者が、かろうじて今も覚えている中国語。
「難見真的人」と「救救孩子」(子どもを救え)。
☆
どこの学校か知らないが、復興のために自分たちには何ができるかとクラスで話しあった子どもたちが、福島のほうれんそうを食べて、農家の人を助ける、と言ったとか。なんてけなげないい子たちだろう。
そんなことを子どもに言わせてはいけない。
少年十字軍の話を昔読んだ。遠くない過去には、ヒトラーユーゲントというものもあった。アフリカの戦乱地域の少年兵士たち。子どもたちは、特攻しやすく死にやすい。
そういえば福島には白虎隊という痛ましい歴史があるよね。
子どもを救えなかったら、それはやっぱり残酷な政治で残酷な社会だ。
それでふと気になって、ヒトラーユーゲントを検索してたら、こんなの出てきた。「万歳ヒトラーユーゲント」という歌。北原白秋作詞。
http://www.youtube.com/watch?v=cVnLcrCNNRY
ああ、空に真っ赤な雲の色…。
今日は今日とて、大阪維新の会府議団、君が代条例案提出へ 起立義務づけ http://t.asahi.com/2gwn と言うニュース。
万歳維新の会。
ああ、空に真っ赤な雲の色…。
もうじき暮れてゆくんだろうか。
もしかしたら、この国がもう、自殺したがってるんじゃないか。
歌は、強制されたその瞬間に、生命をなくすでしょう。