光の花畑

夢を見た。
数日前だけど。
生まれた頃に住んでいた家のあたりにいた、ような気がする。でも違うかもしれない。向かいの駄菓子屋のおばあさんがいた気がする。米屋のおじいさんもいた気がする。でも違うかもしれない。
でもなんとなくなつかしい感じのなかで目が覚めて、それからいきなり思い出した。
5歳まで暮らした家のこと。

通りに面した二階家には祖父母が住んでいて、その奥が中庭で、井戸があって、その中庭の奥に二間きりの小屋があって、私たち家族が住んでいた。
玄関もなくて、ベニヤ板の戸があるだけだった。台所は外、トイレも風呂も、外。母は井戸で食器を洗ったり洗濯したりしていた。

祖父母の家の隣は洗い張り屋だったのだろうか、その家の裏庭とうちの中庭がつながっていて、井戸も共同だった気がする。その庭が私の遊び場だった。隣の庭はたいていがらんとしていたが、ときどき、一面に、洗った布が干してあることもあった。
布が干してあっても、私の背丈のずっと上だったから、遊ぶのに問題なかったけど、影になるから、そういうときは遊ばなかった気がする。

あるとき、その庭に異変が起こっていた。地面が、赤や黄色の光でゆれているのだ。私はびっくりして、それから夢中で、庭をかけまわった。見上げれば、頭上でも、きれいな色がゆれていた。干してある布が、きれいな花柄だったのである。

あのときの、胸いっぱいな感じを思い出した。きれいなものを見て、胸がいっぱいになったのである。それで、それからしばらく、またあんなきれいなものが見られないか、待ちこがれていたけど、たまに干してある布といったら紺色のばっかりで、あのあとはもう、赤や黄色の色付きの影のなかで、遊ぶこともないままに、引っ越すことになったのだった。

地面に光の花が咲いていた。
あれはもう、夢のようなことだった。
あんなふうな胸いっぱいな感じって、人生にそんなにたくさんあるわけでもないんだなと、思う。3歳か4歳ぐらいだったのかな。



これはその頃の私の写真。

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二間きりの、ほんとにボロ家で暮らしていたんだけど、部屋のなかにはぶらんこがあった♪
このぶらんこにはいつも洗濯ものがのっていた。
このときのことは覚えている。3+2はいくつかときかれて、考えたのだ。写真をとられたことは知らなかったけど。うちにはカメラがなかったが、近所に写真屋があったので、たまにカメラを借りて(一回100円だったらしい)写真をとったらしく、この頃の写真はすこしある。
このあと、引っ越したあと写真がなくなる。
息子が、小学生のママを見たかったって言うので探したけど、学校の集合写真の豆粒みたいのとか。

中学に入学した頃、12歳のときの個人写真があった。
息子に見せると、
もごもご口ごもりながら、「この人、似てるよ」って言う。
クラスの好きな女子に似てるんだって。(そういえば似てる。)
で、そう言いながら、顔赤らめてんの。
私がはずかしいわ。

冬休み明けて、席替えしたんだけど、彼女とはまた隣の席になったらしく、
彼はしあわせなのであった。
妄想花畑驀進中。



それにしても。
こんなにありありと思い出すとは思わなかった。
すっかり忘れていたのに。
子どものときに見たあの光の花畑。

あのよろこび。