つくしなのはな1年生

午後、山のほうへ、つくし摘みにゆく。いやになるほど密生しているところがあるのだ。で、袋いっぱい摘む。菜の花も摘む。川べりでカンゾウナ摘んで、近所の川ではクレソンを摘む。
さてそのあとが。
つくしの袴とり、半端でなくしんどい。1時間半かかって、4分の1も片づかない。でもこういう単純作業は、実はきらいではない。
晩ご飯は、つくしとクレソンのちらしずし。いわし缶も混ぜ込んでやると、ちびさん、食いつく。菜の花のおひたし。カンゾウナのぬた。
ふふん、春の野原の草づくし。
やっと春を迎えた気分。


さて、ピッカピカのうちの1年生なんだが。

小学校は、勉強するところだよ、とは言った。
でも、1日目に国語の教科書読んでしまって、2日目に算数の教科書読んでしまうなんてことは、期待してない。
ちびさん読んでしまった。机に向かって、読経みたいにぶつぶつぶつぶつ読んでいた。

もっとも問題なんかは解いてない。ためしに解かせてみたら、6-1=4って、指を折って数えてるのに、なぜそうなってしまうのか、間抜けぶりに、なんだかちょっと安堵する。
長さくらべをしよう、というところに、Nゲージの写真があって、問題なんかそっちのけ、「これは貨物車、これは冷凍車、これはワム」とか言っている。ワム?
ま、キハとかいろいろあるらしいね、よくわかんないけど。それで長さは? 「7りょうと8りょうと9りょうだ。ワムが長いよ」
それはそのとおりですが、「ワムが長い」って言っても、伝わらないかもしれないよ。

さやちゃんからもらった、5年生の理科の実験の、電池で動く自動車。ちびさん、説明書を読みながら、解体して、組み立て直して、また解体して、また組み立て直して、遊んでいる。
電流の実験もできるらしく、磁石もついている。ちびさん説明書に従って、コイルをまいたり、電極をつないだりしている。それからわからなくなって「ママ、実験3はどうするの」ときいてくる。
ああ、勘弁してください。私は電池に触ったら感電死するんじゃないかと思って、そんなはずはないとわかってても、それでもやっぱりこわいのに。
でも、1年生に負けていられないので、がんばって電流の実験やってみる。スイッチを入れると磁石がふれる。なんだかすごいことのような気がする。でもそれがどういう意味かはさっぱりわからん。

「ママ、原爆ドームは、いつできたの? 1945年よりまえは、きれいなたてものだったんだよね。どんなたてものだったのかな。」
と、突然きいてくる。
原爆が落ちて壊れたということは、知ってるんだよね。
きみは広島の子だから、そのうち、いやでも平和学習で習うから、急がなくていいから。
「ママ、爆弾って、どんなかたちしているの。ぼく、それが知りたい」
いろんなかたちがあると思うけど、知らなくていいよ、そんなこと。
「ママ、原爆は、どんなかたちだったんだろう」
リトルボーイリトルボーイ
どこかに原爆の絵本があったはず。
まだ見せたくないんだけどな。
気になるのはしょうがないのか。
原爆ドーム、街に降りる度に見るわけだし。

考える。6歳の子に、原爆を教えるべきか否か。
否、と思う。
思うが。