渚にて

渚にて

海に春の雪がふってるまっしろいかずかぎりないひつじがしずむ

弟がいたかもしれないトランプの城が崩れている 渚にて

かなしみもおそれも語らぬ弟のまぼろしがゆく 炉心近くへ

弟を炉心近くにおきざりにしてうるわしき都会で生きて

手配師に拉致されてゆく弟の行方は知りたくなかった、きっと

どの道も海へとつづく(影という影は泣くようにゆれている)

テロリストが殺されたらしい 太陽をかすませて降る五月の黄砂

花を胸に抱くこともなくぶっきらぼうに海にしずむ死が、ここにも

死は、わたしにくるときもそのように圧倒的な闇の海だろう

海のうえにぽっかりうかぶこの月がかなしみだとはきづかなかった



未来8月号が届いた。これは5月に書いたんだなあ。このあたりのことを、まだ考えている。それで終わらないからつづく。