楽しい、って言う。

7日の雨で、桜散ってしまってせつないが。もうすこし長く見ていたかったけどなあ。
桜って、風や雨を一緒に連れてくるなあと思う。風雨のあと、桜も散ったあとに、ふいに光が眩しくなる。

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中学校3日目。
昨日は、教室に行くのに校舎のなかで迷ったらしいが、今日は大丈夫だった。
今日は「上級生が、校舎内を案内してくださった」そうだ。(彼はこういうとき、ふいに敬語を使うので、聴いているこちらが、なぜかどきどきする)。
みんないろんなところから受検してやってきている。遠くからバスや電車を乗り継いで通ってくるクラスメイトが、ほんとに遠くから来てるので、すごい、と言っている。自分はバス通学なので、電車通学がやや羨ましい。
学校が楽しい、って言う。楽しいって。

小学校に入学する前、見学に連れていったときに、1年生や2年生のクラスを見学して、黒板の足し算や引き算の問題を指をおってやりはじめたときのことを、唐突に思い出した。あのとき、彼はとても楽しそうだったのだ。

入学してから楽しそうでなくなった。まず登校班をこわがった。近所の男子が突進してくるのが(悪気はなかったのだろうが)こわかった。クラスでは、隣の席の子にバシバシ叩かれた。からかわれたり、バカとかぶっ殺すとか言われたり、荷物もたされたり、女の子たちにズボン脱がされたり、いろいろあったなあ。
朝、登校班で並んだ瞬間から、息子の表情に不信と警戒心が浮かぶことに胸がつまったけど。
そのうち、その表情に慣れた。
その人相の悪さは、修学旅行のときにこっそりと様子を見に行った義父さんが、孫はどうしてあんなに不機嫌な顔をしているのだろうか、もしかしたらわしが見ていることに気づいて怒っていたのだろうか、と無駄に心を痛めたほどで、
でもそのとき義父さんが隠し撮りした息子の写真を見てパパと私は笑ったのだ。いつも通りの不機嫌さだよ。

その息子が。
明るい表情で学校に行く。学校に行くときに、こんなに伸びやかな自然体の息子の姿を見るなんてことはなかった。
そして明るい表情で帰ってくる。
学校が楽しい、って言う。楽しいって。
泣きそうだ。