嘘つき

成長している、と言えなくもないが。
子ども、嘘をつくようになった。

すんでいない宿題をすんだと言い、音読もやっていないのに、サインをしろと言う。できないよって言ったら、ママが聞いてないだけだよ、ぼくはやった、と言う。でもママは聞いていないんだからできない。すると、ふん、と向こうに行ったりしてたが、自分で親の筆跡真似てサインしてやんの。
ピアノの練習も、弾いてないのに、もう終わったと言い、おやつの菓子を3日分くらいこっそり食べて、ぼくは食べてないって言う。
自分の欲求を通したいために、パパとママにそれぞれ別々の情報を流す、という込み入ったことまでする。
それで、嘘を言うときに限って、こいつは妙に堂々としている。嘘を本当にするためには、強気でいかなくちゃ、とわかっているふうで、
うそつき、って言うと、逆切れまでする。

が、
おまえ、もう出て行け、
嘘つきと一緒に暮らすのはいやだ、
と、今日あたり叱られて、
もうしません、ごめんなさい、と泣いてあやまるが、
なんの、きみは見かけよりずっと強情だよ。
そんなに簡単にいい子になるなんて、思ってないからさ。

似ている。
いやになるほど似ている。
それでもって、嘘がばれても、あやまったりしない子どもでした、私。
ぶどう畑のぶどうを食べて、現場を見つかっても、食べてないって言いはった。食べてないんだから、あやまったりしない。
だからつまり、おかーさんも嘘つきだったから、きみがどーしてどんなふうに嘘をつくのか、よーくわかるわけです。

「親の因果が子に報い」とパパ。

「たとえからだを裂かれても、狐の生徒は嘘いうな」
って賢治さんは言っていたでしょう。

明日から毎朝、それを唱えてから学校行ってください。