続・2年生

「だって、ブルーシートが見えたから」って、私の秘密基地に石投げた2年のSは言っていたらしいのだった。息子がそれを聞いて、何を心配したのか、ママもう一回、釘をさしといたほうがいいよ、って言う。一度言ったからもういいよって思うけど、登校当番で朝、通学班の子らと一緒に歩いたので、S兄弟とM兄弟が並んでいるあたりで、石投げて遊ぶのはやめなよ、いま、子どもらが、家や車に向けて石投げてっていうことが問題になってて、そのうち学校から注意が行くようになるから、そうなる前にやめなよ。
とは言っといた。

だって、ブルーシートが見えたからって、見えたら石を投げていいのかよって話だが、いきなり思い出した。見えたら石を投げるよ。
思い出した。石を投げたのは私だよ。石、じゃなくて砂だったけど。


1年生か2年生のとき、いつも遊んでいた家の近くの空き地に車が止まっていた。車。あのころ、近所で車もってる家なんてなかったし、家の近くに車が止まってる、なんてこともなかった。
だけど、そのときはいつもと違って、いつも何にもない空き地に車が止まっていた。私はひとりで空き地にしゃがんで、地面の砂をいじって遊んでいて、その砂を車に投げた。砂が車に当たって音がした。また投げてまた音がした。また投げてまた音がした。
ひとりでずっとそうやって遊んでいたら、車の持ち主がやってきて、知らないおじさんだったけど、なんだかすごく怒られた。なんだかすごく怒られたけど、なんで怒られてるのかさっぱりわからなかった。さっぱりわからなかったが、車に何かを投げたら怒られるらしい、ということだけは理解した。
 
なぜ砂を投げたか。日頃見ている光景のなかに、いままでなかったものがあらわれたので、反応した、ということだと思う。ほとんど無意識の行為なので、悪いことしたと思ってないし。叱られても、ただびっくりして、ぼうっとしていて、むしろ、怒っているおじさんのほうが、子どものことを考えないへんな大人に思えた。

Sの石がブルーシートを狙ったのも、異なるものが出現したことへの、ほとんど生理的な反応だとは思うんだよね。

私、小学生の頃、裏山の工事現場の近くに捨てられていたソファーなんかを使って、山の上に、すてきな秘密基地をつくりあげたのだった。なのにあるとき、知らない男子たちにのっとられてしまった。向こうは大勢で私はひとりで、どうしようもなかったんだ。それからしばらくして、台風のとき、基地は、山の斜面から転がり落ちて壊れてしまった。

そういう話を息子にしたものだから、息子は畑の秘密基地が、ほかの子どもたちに乗っ取られるんではないかと、恐れている。だから、あれは、ママの基地なんだってば。長い歳月ののちに、取り返したの。へんな大人に思われてもいいの。子どもは来るな。



畑のいちご、昨日168個+α。今日96個プラスα。