星ヶ丘ゆき

kazumiの日常雑記

断食する、と息子は言う

ことの発端がなんだったのか、すでに思い出せないんだが、
夕方、息子は台所のテーブルで、宿題をしていた。
自分の机だと、ゲームだとか、ミニカーだとか、とにかく誘惑が多すぎて、ぜんぜん手につかないので、台所でさせるのだ。
それでも、親がいなくなると、たちまち自分もどっかに行ってしまうというふうなのだが、いればいたで、「それでママ、……のことなんだけど」って、あれこれ話しかけてきて、やっぱりさっぱりすすまない。
その「……のこと」っていうのがまた、あまりにもばかばかしい話だったりするから、もう、しゃべるのやめて、することしなさい、って私は怒った気がする。

スイミングする睡眠、だったかな、睡眠するスイミング、だったのかな、なんかそんなことも言ってたなあ。いま思い出して、ちょっとおかしい。

息子、一瞬黙ったが、一瞬後に言った。
「あ、ぼく、晩ご飯食べないから」

なんと。ハンガーストライキするのか。
でも何か主張があるわけでなく、ただすねているだけである。 それはいじわるっていうんだ。
わかった。きみが食べないなら、ママもご飯つくらない。パパと一緒に外に食べに行こう。

「どこへ行くつもり」と、あわててきいてくる。
そんなのパパとママの自由だ。きみは食べないんだから関係ない。
「ぼくが行きたいとこへは行かないで。お寿司とかステーキとかは禁止」
だから、パパとママが何食べようが、きみは食べないんだから関係ないって。

息子、涙目。

ところが残念なことに、わし、金ない、ってパパが言った。こんな金のないときに、そんなこと言われても。
それからパパは息子にきいた。今日、▲したか?
「してない」
食わんと▲は出ん。▲は一番大事なことだ。一番大事なことができなくてどうする。
と、パパに強く言われて、うなずいた息子だが、

パパがあっちへ行って、ママだけになると、また言う。
「ぼく、断食をするから」

ああっ、もう。この意地っぱりはっ。 どうして断食するの。
「断食っていうのがあるんだ。そういう修行なんだ。だからぼくはやってみたいんだ。」

修行にすり替えてるしっ。

大人になってからしなさい。イスラム教にはラマダンというのがあるし、ガンジーだって断食したし、大人になって、断食する理由が自分にあると思ったらしなさい。それは自分で考えてやんなさい。
それに、断食したくなくても、ただお金がないとかそういう理由で、食べられないということもあるかもしれないよ。そのときは断食することよりも、どうすれば飢え死にしないかを考えなきゃいけなくなると思うけど、
とにかく、そういう修行する機会はいくらでもあるから、大人になってからやんなさい。

子どもの間はだめです。いつまでも学年で一番ちいさいままでいいのかな。

さてそれからは、いつも通りの晩ごはん。
宇和海で泳いでいた魚が、うちの冷凍庫で凍っている。生姜と一緒に煮つけて、
あと、さつま芋の葉っぱを炒めたのと、さつま芋の茎のきんぴらと、だいこんサラダ。
息子、「ちょっと、がっかり」と言う。
そりゃまあ、すねたぐらいで好物が出てきたりはしないよ。
「今日は給食もがっかりだった」って言う。 何が出たの。
「ひじきと、それから、大豆の柔軟化したやつ。我慢してのみこんだ」

……大豆の柔軟化? 大豆の柔軟化!! そうか、柔軟化なのか。
彼は、全般に煮物の類は苦手なのだ。魚はまだましなほう。 

ママの料理も悪いんだよ、子どもの好きそうなものじゃないもん。鳥の餌みたいだもん。貧乏女子の食卓だよな。
と、パパまで言う。……貧乏女子だもん。

息子、文句言ったわりにはよく食べた。魚煮たやつ。
それで、私と息子の食べ散らかしたやつを、骨をお湯ですすぐまでして、パパはきれいにしゃぶりつくすのだった。 
それはもう、ほんとに見事だ。