昨日はきれいな秋晴れの一日だった。シュウメイギクが、庭のあちこちで白い花を咲かせているのが、まぶしかった。
こんなふうな秋晴れの日に、家族で山に登ったことがあった。15歳の頃、親しかった隣家の家族とも一緒だった。登った山の名前も覚えていないが、けっこう高くまで登った気がする。
薄暗い木立を抜けると、ふいに広々としたところに出た。山の斜面は一面のすすきの野原で、すすきに光がはねてまぶしかった。雲が、遠くの山々や、ふもとの町や田んぼや畑に、影を落としながら、ゆっくりと流れていった。
翔びゆく雲の落とす影のやうに、
田の面を過ぎる、昔の巨人の姿──
中原中也「少年時」
あの山登りが、私たち家族の最後の行楽になった。