後ろの正面


 昨日は久しぶりに市街へ降りた。気持ちのいい天気で、山の紅葉も、街路樹の紅葉もきれいだった。
 平和公園で1時間ほど子どもを遊ばせた。原爆の子の像あたりで、さっそく鳩を追いまわしていた。どんぐりも拾った。銀杏の黄葉のせいだろう、さしこむ日差しが明るくあたたかく感じられた。
 秋の夕方、小さな子どもの影も、ふしぎなほど長い。

 子どもは、最近にわかに、やんちゃになってきた。
 「こら」と言えば「こあ」と返し、「だめ」と言えば「だめ」と言い返す。不満があるとタコみたいに唇をつきだして突進してくるのがおかしい。
 膝にのぼって抱きついてばかりだった子が、ときどき、背中にくるようになった。自分がママの背中にまわることもあれば、ママの体をつかんで回れ右させることもある。そういうとき、彼は見つかったら叱られそうなことをしている。リモコンをさわったり、ゴミ箱のなかをあさったり、ベッドの柵に足をかけて、高いところにある(つまりさわってはいけない)ものにさわろうとしたり。
 後ろの正面は、悪さをたくらんでいる子どもである。
 それでもって、見つかると不敵に笑うのだ。