そこにはだれもいないのに


   昨日の朝、起きたら15センチほど積もっていた。あたりは一面の雪景色。向かいの森の大きなモミの木も雪をかぶってクリスマスツリーに変わっていた。庭に積もった雪の上に真紅のもみじが散っていた。紅葉の山々には、粉砂糖をまぶしたように雪がふりつもっていて、なんだか魔法みたいだった。
 朝すこし停電。こんなに急に寒くなっては、冬仕度が追いつかない。

   家の裏の狭い通路にはめったに足を踏み入れないが、雪の様子を見るのに、窓からのぞいてみると、通路の角に植わっている薔薇がまだ咲いている。ピンクの薔薇がふたつ、雪をかぶったまま、重そうに空中にゆれていた。反対側の隅にある山茶花も花をつけていた。こちらもピンクの花で、去年ぐらいから咲き出したのだが、すでにいくつも花をつけている。

   そこにはだれもいないのに、そこにも白い花が咲く

 昔そんなことを手紙に書いてくれた人がいた。今日は雨。積もった雪の上に穴をあけながら、雨が降っている。