百年を経たあとは


 雪。積もっている。粉雪が舞っている。音のしない昼下がり。

 百年を経たあとは
 だれもこの場所を知らない
 そこに演じられた苦悶も
 平和のように静か、
     エミリ・ディキンスン(安藤一郎訳)

 そしていつか、死も忘れられる。暮らしも、人生も、無数の出来事も、忘れられるよりさきに記憶さえされずに、過ぎていく。はかなさは、けれどもしかしたら、恩寵のようであるかもしれない。