芙蓉鎮

 
 いままでに観た映画のなかでベスト3を選ぶとしたら、必ず選ぶ。
 『芙蓉鎮』 監督は謝晋。80年代のおわり頃に観た。

 中国の文化大革命の話。女主人公の玉音は、夫とともに米豆腐屋を営んでいたが、夫は殺され、財産は没収され、玉音は五悪分子の烙印を押されて、町の掃除を命じられる。
 もうひとり秦という男も掃除をさせられているが、玉音がひたすらつらさを耐えているのに対して、秦は飄々として、踊りながら掃除する。そうして玉音をはげましているのだ。
 雪の朝、ふたりが石畳の道を1、2、3、1、2、3、と踊りながら竹箒で掃いている場面がすごくいい。
 ああそうか、抵抗、とは、よろこびを手放さないことか、と思った。
 ふたりの間に愛が芽生え、玉音は妊娠するが、結婚は認められない。逆に反革命分子として裁判にかけられ、秦は10年の懲役を言い渡される。大雨のなか絶望して立ちつくす玉音に、秦が言う。
「生き抜け。ブタのように生き抜け。牛馬になっても生き抜け」

 ようやく年末の大掃除にとりかかった。台所をすませただけで疲れてしまった。毎日すこしずつしていれば、こんなに大変じゃないのに、と毎年思う。
 窓の外は雪が消えずに半ば氷になって残っている。抵抗でもなんでもないが、今日も3拍子で掃除をしよう。