がぎぐーご


 雪は朝、粉砂糖をまぶした程度に積もっていた。昼間すこし、夜もすこし雪。

 子どもは起きるなり「あいうーお、なにぬーの、まみむーも、がぎぐーご」(え段は苦手らしい)と言いながら、もらった「あいうえおボード」で遊びはじめる。ボードと一緒にもらった「あいうえお絵本」もめくる。「ししし、けけけ」などと叫んでいる。

 さて、そのボードにも絵本にも、濁音がないのが私は気になっていた。ボードには「゛」を押せば濁音になる仕組みはあって、子どもは「が行」にはまっているが、文字そのものはないのだ。
 それで思い立って、部屋の破れた襖(もちろん子どもが破った)いちめんにガムテープではってある古いカレンダーに、100個ばかりの小窓をつくって、窓をあけたら中から文字が出てくるようなのを、午後いっぱいかけて作ってみた。文字は「あ~ん」と「がざだばぱ」行。ついでに数字の0~20。
 この手の工作ははまる。その間、抱っこもしてもらえず、はさみやナイフをさわろうとしては叱り飛ばされている子どもこそ受難。もしかしたら、こんな面倒なことをしなくてもカレンダーの上から紙を貼ればすむことだったのではないだろうか、と途中で気づいたけれど、はじめてしまった以上は終わらせるしかない。

 「がぎぐーご」と子どもがさっそく読んでいく。「げ」をとばして目配せしているのは「え段」が苦手というだけでなく、「げ、げ、げげげのげ」を歌え、と無言のうちに催促しているのだった。