雪のピアス


 昨日の朝の積雪15センチほど。庭だけすこし雪かきした。ついでに雪だるまひとつ。
 夜、星がおそろしくきれい。向かいの森の大きなモミの木の上にオリオン。ピシピシ音がしてくるみたいな光りかた。道の雪がなかば氷りながら、月光に青白く光っていた。

 昔、雪の夜にピアスをなくしたことがある。友だちがくれたもので、銀色のとても小さなピアスだった。雪の道をしばらくたどりなおして探したけれど見つからなかった。あのとき雪が街灯に照らされてきらきらする光のひとつひとつが、なくしたピアスに見えていた。たったひとつのピアスをなくしたかわりに、無数のピアスを見つけていた、といえばロマンチックだが。

   ピアスの穴はフィリピンであけた。ゴミの山のスラムで、小さな女の子の耳にピアスのかわりに糸を通してあるのを見たとき、なぜか、私もそれをしたくなった。せっかくあけた穴、最初のうちは、あれこれ刺していたけれど、生来の不精者、そのうち面倒くさくなってやめた。もう穴もふさがってしまったかもしれない。

 夜、玄関の温度計は0度。冬は必ず春になるけれど、その前に、冬は必ず寒くなる、と思う。そして寒いのはまず、耳が痛い。