名前


 昨日の午前は、保健センターの親子教室へ行く。これで3度目。子どもは場所にも慣れて、エレベーターのほうにすたすた歩いていく。出席表にシールを貼るのも自分でやった。特訓のかいあって、なのか、特訓のかいもなく、なのか、自分の名前を呼ばれたとき、返事はしないが、両腕を微妙に顔の高さぐらいまであげていた。家ではやっぱり返事はしないけど、腕は(なぜか両腕だ)、頭の上まで勢いよくあげるんだけれどね。

   子どもに名前を教えながら、ほんとうは名前なんてないんだけどな、と思ったりしていた。きみにも私にも。生まれる前にも生まれたときにも、名前はなかった。でもそのときにも、そこに生命はあったのだし、それはほんとうは名づけようのないものなのだと思う。
 名前は生きていくうえで、とりあえず必要な約束事みたいなことにすぎないのだけれど、でもそこに、人間の尊厳のようなものがあったりするから、大切な約束事にはちがいない。ちびさん名札もつけてください。

 「♪あら、すてきなお名前ね♪」と保健士さんたちは子どもたちの名前を呼んだあと、ひとりひとりにそう歌ってくれた。