吹き行く風のバラード


 久しぶりにCDを聴いている。アマリア・ロドリゲス。この時間だから音量は小さく小さくして。ひとりで暮らしていた頃は、あれこれのCDを聴きながら眠りに落ちるのが、好きだったけれど、小さな子もいる今はそうもいかない。毎日は、せがまれてアンパンマンの絵なんかかいてるうちに過ぎていく。
 そうこうするうちに欲求不満がたまってきて、かといって、この夜中にCDを探すのも面倒で、とりあえず手にふれたのが、アマリア・ロドリゲスの「コン・ケ・ヴォス」。ポルトガルのファド。なんてなつかしい歌声だろう。日々の生活のなかで、表現できず、おそらく気づきもしないで深くに凝ったままでいる感情が、彼女の歌声にあまえて、流れ出ていく感じ。心の深くの凝りがほぐれていく感じ。

「しかし、いつでも苦悩の中には 灯があるのだ
  いつでも吹き行く風に 歌をまきちらす人がいるのだ」
               (吹き行く風のバラード)