夜の雨


 夜になって雨。子どもを寝かせるのに、電気を消して横になって雨音を聞いていると、なんだか船の底にでもいるような気がする。水のなかでゆられている気がする。屋根があること、自分がいま、この雨から守られていることが、なんだかとても不思議に思えてくる。まるで、ノアの箱舟に乗ることを、なぜかわからないまま、ゆるされてしまったみたいに。

 一枚の毛布のことを思い出した。子どもの頃に家にあった古い毛布。すりきれた黄色い地に、船頭が小船を漕いでいる模様が、黒く浮かんでいた。毎晩それにくるまれて寝た毛布。見ていると自分もその船に乗っていて、どこかにゆらゆらと運ばれていく気がした。でもどこへ行くんだろう。

   あのときと同じ気持ち。夜に、目を閉じて雨の音を聞いていると、船にゆられてどこかへ運ばれてゆく気がする。思い出せないむかしに、運ばれたこともある気がする。でもどこへ? どこへゆくんだろう。

 楽しいところでありますように。小さな子がいますから。